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俺はなぜか、池田に惹き付けられるものがあった。池田の近くに寄っていく。 「池田さん。初めて例会に参加させてもらう吉行です。」 「あー、吉行さんですね。ボク、目立つでしょ?」 「いやー、自己主張がはっきりされてる方だなーと思いましたよ。」 「ボク、車イスになってから性格がひねくれてしまったんだよねー。運送関係の仕事してて、団地に重量物を階段で運んでいたら、転倒してしまって。それで車イスになってしまった。」 「そうなんですね。」 その後、なぜか?俺は池田と意気投合して、飲みに行くことになった。そして汚い場所だけど、と言って家に誘ってくれた。 扉を開けるとそこは、異空間だった。大量のゴミ袋があり、異臭がする。電灯をつけると、大量の雑誌が積み上げられている。ふいに、テレビを池田がつけると、アダルトビデオが流れ、女の「あーん」「あーん」という喘ぎ声が聞こえる。池田に促されるまま、その場に座った。冷蔵庫から缶ジュースを取り出してきた。 「まあ、飲めや。」酒のせいで今まで敬語だったのに、タメ口になっている。 「オレがこうしてね。自信があるかと言うと、ある宗教をやっているからだよ。」 ある本をゴミの中から取り出した。 旭日の会(きょくじつのかい)と書いてある。 池田の話から推察すると、日蓮系とキリスト教を混ぜた新興宗教であるみたいだ。本を読みながら、ページをパラパラとめくり。一節を引いた。 「求めよ、さらば開かん。訪ねよ、さらば見いださん。」その一節を開いて、俺と池田とに、ある種の距離感を感じた。池田は、その距離感が生じているのを見逃さなかった。 「お前も荒木様に会えば、わかる。」と言った。 アダルトビデオが流れている画面を池田が指差して言った。「性処理でもないときに、アダルトビデオを見ると気持ち悪いだろう?男女のからみが。人間は不浄の存在なんだよ。穢れがある、だから穢れを取り除くために祈りを捧げるんだよ。」 池田は、突然ゴミの山の中にある仏壇にに向かって南無妙法蓮華経と唱え始めた。呆気に取られている俺を池田が見ると、 「お前も一緒に唱えろ」と言った。俺も一緒に南無妙法蓮華経と唱えた。なぜか気持ちがスーッとするのを感じた。題目を唱えると、気持ちの膿のようなものが浄化されるように思った。 「まずは食事会からだ。なっ旭日の会に行ってみようぜ。」 「わっ、わかった。」 俺は自然と言葉が出ているのに驚いた。
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