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ドーンッと神殿を想わせる建物だ。旭日の会が多額のお布施と介護事業所に食事を提供する会社の経営利益から、買い取った建物だ。この建物はバブル期に建てられたもので、外観も内覧も豪華絢爛(ごうかけんらん)である。俺は旭日の会に招待された。池田の計らいもあって、この食事会は、俺は無料だ。
俺は建物の中に入った。大きなエビフライ、山積みされたハンバーグ、様々な形に変形された果物
。が目に入る。バイキング形式のようだ。
美人で宗教的に洗練された冷たい感じがする女性から、取り皿を渡された。いろいろ種類がある。
チキンの中華和えを取り皿に取りそろえていると、池田が声をかけてきた。池田が付き合っている彼女を紹介された。この宗教で出会ったそうだ。ロングの黒髪がきれいな女性だ。
「楽しんでいるかい?うちの宗教はこんな感じだから、見てもらえればわかると思う。」
と池田が場を和ませようとして言った。
「こんにちは」
池田の彼女も挨拶をしてきた。
「おっ中華和え食べているのかっ。」
俺の取り皿を指差して言ってきた。
「見てくれよ。ボク、日頃が、フライドチキンやハンバーガーばっかり食べていて不健康でしょ?だから健康に気を使って彼女が生野菜を大量に皿に盛ってきた。」
池田の彼女がにっこり笑った。
サイコロステーキを食べているとき、恰幅のいい王様のような風格のある男性が現れた。近くの真珠の首飾りをしている女性が「荒木様っ。」
と声を発した。荒木様は会場に現れると、すぐに流れるチョコレートの前に行き、メロンを沿わせてむしゃむしゃと食べ始めた。近くを見回すと新入りの俺を発見して声をかけてきた。
荒木様と目がぱっちりと合った。
「よし、キミと食事しよう。」
荒木様がそう言った。そしてサイコロステーキを食べたばっかりであったが、また新しいステーキを用意させた。
「人間はどういう存在と思いますか?」
こんにちはと挨拶もなしに声をかけてきた。よく通る大きな声なので、スーッと頭の中に言ってることが入ってきた。
「深く考えたことないです。」
「人間は不浄の存在なんですよ。
キリスト教の聖書にも人間は罪人と出ている。
だから人間は不浄の存在なんだよ。」
荒木様は髪型をオールバックにしている。光に反射して、てかてかしている。
つづけて「仏教の真髄は南無妙法蓮華経なんだよ。」と言った。荒木様は、器用にナイフとフォークを動かしながら食事している。
突然、「絵を見に行こう」と言って、荒木様は立ち上がった。荒木様と歩いて、ある部屋に入っていった。ドーンッと大きな絵がかけてある。男女がセックスしているものだ。見ていて、気持ちのいいものではない。
「これが不浄の象徴だ。だが、人間はその快楽に浸っていたい。恥というのがあるから、人間なんだよ。犬なんかはそこらへんで性行為をしてしまう。キミは、この絵を見ているくらいでビビっているようだが。もっと面白いものがあるから見に行こう。」
花柄の壁紙が印象的な暗室に入っていった。
男女の卑猥な声が聞こえてくる。突然現れる光景に唖然とした。ガラス越しに生々しく男女がセックスしていた。
「驚いたろう?これは、マジックミラーといって向こう側からは、こちらは見えず。こちらから向こうが見える特殊なガラスだよ。彼、彼女はうちの信者で、恥を乗り越える修行をやっているんだよ。セックスという快楽の変わりに恥という罰を与えている。
まあ、ここはこんな感じだよ。次は祈りの間を見に行こう。」
長い廊下を歩いている。突然。南無妙法蓮華経と唱和している者たちの声が聞こえてくる。
ドーンッと「南無妙法蓮華経」と書かれてある曼陀羅が目に入る。皆、一心不乱に唱えている。
「皆、熱心に修行しているだろう?修行を通して何かキミの人生が開けてくると思わないか?
キミは童貞かね?修行はあのマジックミラーのある部屋でのセックスも入る。この機を逃すと素人の女性とのセックスする機会は二度と訪れないかもしれない。」
俺は一瞬迷った。
「どうだ!入信するかい?」
素人の女性とセックスの機会・・・の文言が頭に鳴っている。思わず「はい」と答えてしまった。
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