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「こんにちは松崎ミハルと申します。この展示は子供達に第二次世界大戦を紹介するために制作しました。戦争って、人類の歴史を表していると思いませんか?戦争と文明って、対をなすくらい関わっていて、文明を押し上げたのは戦争なのよ。」 ミハルは陽気で好意的に見えた。 「そうですね。俺は横井庄一の生き方にニートでクソな自分自身でも必死で生きてみようと勇気をもらいました。」と俺は答えた。 「必死で生きなきゃダメよっ。どんなに絶望しても自殺なんかしちゃダメ。何年も飾ってある展示を替えようとそろそろ思ってるから、リハビリがてら手伝ってくれない?」 「あっ、いいですか?なんか生きることに張り合いが生まれたなあ。」 ミハルは目がパッチリした美人だった。 どういう展示にしたらいいのか?訊かれたので、やはりそこは横井庄一がいいのでは、と俺は提案した。 俺は汗を垂らしながら自転車を漕いだ。展示を作る為に図書館へ通う日々が始まった。ミハルから展示制作の説明を受ける。まず、書籍になっている資料から必要な写真が掲載されている部分を拡大コピーする。そして俺が考えた説明文をミハルがなおしを入れながら作る。考えた説明文は専用の機械できれいに活字に打ち出すことができるやつできれいに清書する。俺は美人なミハルと協同作業ができてうれしいなあと思った。ミハルは午前中は司書の仕事である貸し出し業務をやっているが、午後からいろいろ調べたり、専門紙に載せる文章を考えたりと、研究活動をやっている。 その午後の時間を少し俺との展示制作にあてる ことができる。せっかくもらったチャンスをきちんと実りあるものにしたい。 説明文を思いつき文章化するのは、俺にとっては大変な作業である。ミハルをデートに誘ってみたいが、それはこの作業が終わってからにしよう!!と自分の中で決める。ミハルと意見が食い違う一幕もあった。〈敵国が襲ってきて、殺戮と強姦と略奪を行った〉と説明文に書いたら、「強姦」という一語は子供にはよくないとミハルは言った。俺は戦場で起こったリアリティーを子供には感じてほしいと思ったが。ミハルは子供の成長に悪影響を及ぼすものは、よくないの一点張りだった。そこで、責任者であるミハルの意見を受け入れた。「強姦」の字は削除することにした。 数日かかったが、なんとか展示を完成させることができた。ミハルに展示制作が終了したお祝いをしようと俺は提案する。ミハルはすんなりとオーケーしてくれた。
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