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二人は、徒歩で近くの喫茶店へ向かった。外は
少し暗くなっていて、夜が見え始めていた。
その喫茶店は、遠くから見るとオレンジ色に、温かみのある色に照らされている。店内に入るとすぐに、大きなキリスト教風の絵が掛かっていた。
席に着くと、クリームソーダとオレンジジュースとロールケーキをそれぞれ頼んだ。
「お疲れさま」カッチンとコップをお互いに鳴らした。
「やっと終わりましたね」
「そうね。制作するの、たいへんだったけどね。印象に残っている部分はあるっ?」
「やはり横井庄一さんが何もないところからやしの木を加工して、羽織機や服を繊維から作るところですかね。」
「ゼロから何かをつくるって、人間のバイタリティーを感じるわね!!あなたも就職なり、何なりして何か始めたほうがいいわね。」
「何かやりたいって、気持ちが今まではなかったけど。ミハルさんとの協同作業を通じてそのやる気を養えたように思えます。」
「おっその調子!!なんか話に聞いていたけど、中退した大学って、わたしの出た大学と一緒だったらしいわね。」
「九州大学ですかね。国立大学だから、ここらへんじゃ有名ですよね。自分は勉強についてこれなかったけど。ミハルさんは充実した学生時代でしたか?」
「自分の好きなことを勉強してたから、比較的充実してたわね。もちろんそのときどきで悩みもあったよ。人間関係とかね。」
俺は一通り話終えると、オレンジジュースを一呼吸置いて飲み始めた。そしてロールケーキを器用にフォークで切り分けると、口に運んだ。フラれると思ったがこの際だと、想いを振り切って。
「オレ、ミハルさんと付き合ってみたいんだけどっ。」
「ダメよ!!わたしは働いている人が好きだもん。」
「じゃあ働いたら、お友達から始めてもらっていいですか?」
「考えてみる!!」
その後電話番号を交換した。そこまで、駒を進めることができた。俺はミハルと付き合うことができると思ったが、そこまでに至らなかったのは後悔があるが。まあー、よしとしよう。
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