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ピンポンッとチャイムの音が聞こえる。せわしなく皆々が画面に一生懸命に向かっている風景が目に入る。番号が大きく写し出されたパソコン画面が素早くタッチペンで切り替わる。俺は何の職業に就きたいが、まだ決まっていない。ミハルとの約束めいたものを果たすために、この場所に来た。 番号札を渡す等をやっている受付を通り過ぎると、指定された席に着く。パソコン操作などは得意な俺はすぐに操作の要領を得る。営業などのホワイトカラーは大卒がほとんどの条件であった。 それか経験者かである。たくさんある選択肢から搾りこうと思った。検索ワードのキーワードの欄に、工学部出身ということもあってモノづくりに興味があった。それなので、「製造業」と入力する。数十件くらいヒットした。 その中で直感で金属加工の会社が一件あったので、それを選ぶ。求人票をプリントアウトする。紙切れ一枚を持っていき、求人の相談窓口の席に並ぶ。受付番号を呼ばれたので、窓口に行く。 窓口では簡単な挨拶をして事務的に会社に電話をかけてくれた。電話が終わると、会社側からの面接の日時を告げられた。俺は面接対策をきっちりしていこうと心に決めた。ミハルとの約束を果たすために。 ギーッギーッ。ガチャッンガチャッン。金属を加工する音が聞こえる。工場内から青い帽子を被った優しそうなおじさんが出てきた。この会社の社長である。俺は少し緊張気味だ。社長が工場内を案内してくれた。さまざまな工作機械が並んでいる風景が目に写る。そしてすぐに、談話室と書かれた部屋に通された。そこで面接が行われるのだ。社長はすでに、履歴書に目を通しているみたいだった。 「九大に通ってたんだってねー。すごいね!!」 「中退していますけど、、、。」 「われわれの世代では憧れだよ、九大!!。 きみ、頭良さそうだから。採用しちゃおうかな。 採用!?ねぇ早く来てよ。まず最初にやってもらう仕事は金属の板をボタンを押して機械にかけていくプレス作業。ふつうにやれば簡単な作業だから。」 「わかりました。一生懸命がんばらせていただきます!」
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