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5.
山村の実家では、彼の妹だという女性が迎えてくれた。
訊ねたのは、彼を入れて四人。香典は同級生一同として、一つの袋にまとめて入れた。
山村の遺影を見ても、何となくおぼろげにしか思い出せなかった。
狢森含め、一緒に行ったほかの三人もそうだ。
学生時代の面影は微かに残っている者もいるが、体形も変わって別人にしか見えない者もいる。
もちろん彼自身も変わっているのだろう。何しろ彼らと最後に会ってから、二十年以上も経っているのだ。
「兄は余り健康的じゃない生活を送っていました。俺は長生きできないだろうなと、自分でも常に言ってたんです」
線香の漂う部屋で、山村の妹が言った。
「一日ほぼ動かずに絵ばかり描いて、徹夜することも普通でした。食事はカップ麺、甘い物とポテチが大好き、ヘビースモーカー。それを直そうともしませんでした。長生きできるほうが不思議ですよね。でも、それなりに幸せな人生だったんだと思います。結婚はしなかったけど、才能に恵まれて、自由で、好きなことをして、それが仕事になって、沢山の人に憧れられて。そんな兄を私はうらやましく思ってました」
山村の遺影の横には棚があり、たくさんの本や漫画、イラストがディスプレイされていた。その膨大な量に彼は驚く。
そして、その上の壁には、額で装丁された大き目のイラストが飾ってあった。
彼はその中にあるものを見つけて、引き付けられるように近づいた。
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