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頂上には、大きな鳥居と灯台が待っていた。親子連れが楽しそうに、何かを指さしている。
「灯さん」
名前を呼ぶと、潮風に揺られる髪を押さえながら、灯がこちらを向いた。
「灯さん、好きです。愛しています」
灯の目がまん丸になって、目が伏せられる。赤くなった頬にキスをしたくなった。
「僕のこと、ずっと覚えていてほしいです」
はにかむように笑った灯の顔は、なびく髪でよく見えない。縦に振られた首の動きを、脳に焼き付けた。
「すごく嬉しいです。でも、欲を言えば、あなたに一番に愛されたかった」
眉をひそめた灯が口を開いたが、風の音が五月蠅くて、よく聞こえない。
「あなたの中に常にあって、愛されているのは幸大だ」
体当たりをするように、胸にしがみついてきた灯は泣いていた。必死に何かを言っているが、聞こえない、聞こえないふりをした。
「僕も同じように、いや、それ以上にあなたに愛されたい」
灯の顔が、透明な膜の向こう側にあるようで、彼女の顔や姿を、うまく見ることができない。
「だから」
灯の手を引きはがし、崖の方へ、身を委ねる。
これで灯は、僕のことを忘れないでいてくれるだろうか。永遠に。
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