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呪術師の家系に生まれた和泉君は石や人の身体から出る霊気が見えると云う。
彼自身の指先からも半透明の霊気が出ていて、指と指の間に溜まった霊気が皮膜に見えなくもない。
自宅の近所に暗小路なる細道がある。子供の頃、公民館に幽霊が出ると噂を耳にした。公民館の隣には郷土資料館があるが、元々は暗小路に建っていたのだと云う。夕方、図書館に行く為、暗小路を通ると背丈の低い半透明の人影が立っている事があった。その日も、人影を尻目に暗小路を通り抜け、ふと、気配に振り向くと半透明の奴が付いて来ていた。尾行されたのだ。引き返して触ろうとすると、すうっと逃げて行った。指先の霊気には、互いに引き合う、或いは反発する性質があるのか
もしれない。そして、背の低い人影の正体だが、郷土資料館に保管されている河童の彫像かもしれない。河童の背は低く手には皮膜があると云う。和泉君の一族にはツチグモ一族の財宝伝説が伝わっており、元々が土蜘蛛なる妖怪、或いはマツロワヌ民なのだ。先祖に、河童も居たかもしれない。
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