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 ロンが掲げた魚はブラックホールのように広く口を開けて、激しく尾鰭を震わせていた。ロンの顔より少し大きいくらいのサイズだ。 「これ、ブラックバスな。あんまり大きくはないけど」  初めて聞いた名前だった。大口を開けたその姿が風をいっぱいに含んでいる鯉のぼりに似ているため鯉の仲間かと思っていたが、その予想は外れた。  口から針を外し、ブラックバスを草むらに置いた後、ロンはポケットから折り畳みの多機能ナイフを取り出して、エラ付近を切った。その瞬間からブラックバスの動きが徐々に鈍っていき、最後は完全に静止した。  息の根を止めた後に、ロンは湖の水でブラックバスの血を抜いていく。 「何で殺しちゃったんですか?」 「食うためだ。こいつは外来種だから生態系を壊す。だからリリースしないで食っちまったほうがいい。白身がふっくらしていて、意外とうまいんだぜ」  果たしてこの魚が本当に美味しいのかと疑問を抱いたが、釣りの得意なロンが言うのだ。間違いないのだろう。
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