箱庭の世界

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 高熱を出したとき、寝室で1人になるのが怖かった。  目を瞑って、寝るだけで終われば良いのにと、何度も思った。  それでも、血液の音に目を開けると、見てしまう。  天井が、離れていくのを。  瞼を閉じる方法を忘れたみたいに、引きつけられる。丸い電灯があるだけの天井は、見慣れているはずなのに、どんどん知らない距離まで遠ざかっていく。  怖くなって斜めを見ても、その場所が動いていくだけ。挙げ句の果てには、手を動かしただけで届く場所にあるはずの棚まで、部屋の大きさ以上の位置に感じる。  背中には布団があるはずなのに、体重の感覚が消えている。この世界から離れているのは、自分なのかと錯覚するほどに。  このまま、この世で独りぼっちになる気がして、心の箱が空っぽになった。
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