レベル 1  ―  交渉 ―

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突如茂みから宙を舞い現れた兵士の姿に、雑魚魔物は反撃すること無く震えじっと見つめ返す。 「うっ……」 振り上げた刃物を握りしめたまま、俺は両手を動かす事が出来ずにいた。 『こいつ……、泣いているのか?』  そう心で呟き油断した瞬間、大樹に身を隠す二つの影は、両手を広げ自らの身を投げ出し雑魚魔物を庇うように姿を見せた。 「ハッ……」 「お待ち下さい!」 「貴様ら……、人間なのか?」 「どうか、お助けを」 「……」  薄汚れたロングコートのフードを被る二つの影、木漏れ日の明かりから伺えるその表情は、白髭のご老体と泥で汚れた面構えだか明らかに若い女の姿。想定外の事態に戸惑いながらも、レーダーの光は三点が重なる。 「異世界の者か? 」 『こいつは驚いた……、魔物以外を見るのは初めてだぜ』  二人はゆっくりと頷き救いを求める。 「この魔物は魔術により姿を変えられし我が国の姫でございます」 「この雑魚が姫?」 老人は静かに頷き詳細を語り始めた。 「異世界においてある者の裏切りにより、この国へと追放され再び開く時空間の狭間が出現する時を待ち身を潜め元の世界に戻る最中、戦いにまき込まれた次第でございます」 「ジージーッ、エリアDクリア。エリアE、お前何手こずってんだ? まだ三体も残しやがって。これより中心部より応戦する」 「ジージーッ、直ぐに片付ける。応援は必要ない」 「ジージーッ、糞野郎! お子ちゃまは帰ってママの乳でも飲んでなっ。目障りなんだよ、お前みたいな変態が精鋭部隊にいることがよぉ!」  エリア内に残る魔物は残り三体、それは俺の目の前で救いを求める者たちであった。 『くそっ、モタモタしてると筋肉馬鹿隊員に即皆殺しにされる。仮に保護しても異世界の人間なんて、監禁、拷問、実験体、解剖……』 「ジルト、急がねば異世界への狭間が消滅してしまいます」  女が放つその言葉に老人は両手を重ねると、何やら呪文を唱え始めた。 「サージマジュールリームダス……」 「ジージーッ、ブラックホールに異常発生! なっ、なんなんだ……、 閉じかけた筈なのに、万華鏡の様な輝きを放ち始めた!」 「ジージーッ、用心しろ! 中から魔物がくるかもしれん」 「ダダダダダダダ、一斉射撃先制攻撃しろ」 中心部の慌ただしい無線が耳に飛び込み緊張が走る中問いかける。 「貴様、呪文で何をした?」
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