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閉じゆく異世界との時空の間を繋ぎとめていたのは、ジルトと呼ばれる老人異世界人の魔術。
「ルシファ急がねば、私の魔力ももうすぐ尽きます」
懸命に救いを求める二人の男女と一体の魔物。
『ジルトという老人、魔術が使えるのに何故俺を攻撃しない……』
その疑問の答えは銃声と共にすぐに理解する事となる。
「ダダダダッ」
「ハッ、やめろっ!」
隣接するエリアDから応援に駆け付けた巨体の兵士は自動小銃を手に魔物目掛け発砲すると、魔物を庇うように水晶が煌びやかに輝き光を放ち幾つもの弾丸を吸収してゆく。
「防御系のシールド魔術……、
ジルトは今、消えゆく異世界の入口を繋ぎとめながら二人を守るべく術を行い、攻撃する余裕などないのか」
「チッ、防御魔術かっ。ジージ―ッ、エリアEクリア」
『えっ……』
「ジージ―ッ、どう言う事だ! まだレーダーには三体残っているぞ」
「ジージーッ、またレーダーの故障だな。今、エリアDから合流したが既に死体しかない」
「ジージーッ、了解」
二人の兵士の間に挟まれたジルトとルシファ、そして魔物。防御するだけで精一杯のジルトはやがてその場に片膝をつくように倒れ込んだ。
「ジルト!」
「ふふっ、思った通りだ。魔力も尽きたか? どうやらお前のシールド魔術は解かれた筈。今俺が引き金を引けば即死」
『ジルトは残りの魔力を異世界の入口だけに注いだのか――』
「やめろっ!」
「馬鹿か糞野郎? 任務を遂行しろっ!」
「嘘の報告をして助けるつもりじゃないのか!」
「あぁ、そのつもりだ。この国初の異世界人確保だからな。金の臭いがプンプンするぜっ。魔物は殺して、厄介な魔術師もズタズタに切り刻んでやる。異世界の女、どんな身体かたっぷり堪能してから金に換える。先ずは、糞野郎のお前が先に消えな」
そう仲間の兵士が言葉を終える前に、俺はサバイバルナイフを投げつけていた。
「シュ――ッ、グサッ」
喉仏に刺さる黒光りする一本のサバイバルナイフ。兵士の吐き捨てた言葉と共に真っ赤な血が噴き上げると巨体の身体は一気に茂みの中へと倒れ込んだ。
「ドスンッ……」
「……」
「殺っちまった……」
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