1章:友人くらいなら

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 ただし私に言わせれば、声以外は非常な残念感が漂っている。そのうちの一つが性格だ。 話していてもどこか捉えどころがなくて、ただイライラさせられる。さらに私が嫌がっているのが分かっていて、こういう会にいちいち呼び立てる性格は最悪だと思っていた。  そう。つまり、私がこんなパーティーに出席させられている原因は、まぎれもなくこの男・白鳥時崇なのだ。 「あなたが私の出席をいつもねじ込むんですよね。しかも祖父からトップダウンで」 「何度誘っても姿すら見せてくれない。お会いするにはこうするしかないですからね」 「親のスネかじらないと女性一人落とせないなんて残念な方」 「そろそろ電話番号だけでもいいので教えてください」 「残念。スマホがなくても生きていけるので持っていません」 「信じられないな、ほんとう?」 「あなたに信じていただかなくても結構です」  ちなみにこの会話はいつもの通りだ。私が怒っていても、目の前の男はただ人のよさそうな笑顔と優しい声でニコニコしているだけ。  それがまた私の怒りを増幅させる。いくら声が良くても、それを全部かき消すくらいのいらだちが湧くのだ。
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