1章:友人くらいなら

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 私はむっと唇を曲げると、 「前から思ってたけど、この人なんなの。変態?」 と灰谷に小さく囁く。  世の中には『ドM』という、人に虐げられるのを喜ぶ人種がいるらしいけど、それはこの白鳥さんだと思う。もし本当にそうなら、完全に変態だ。それを想像して鳥肌が立った。 「そらさん、口が悪いです。ついでに態度も最悪です。陸人さんと会長にご報告しますよ」 「ちょ、灰谷やめてよ! そもそも、なんで灰谷がここにいるの」 「そらさんがなにかしでかさないか不安でいてもたってもいられずに立候補しました」 「相変わらず失礼ね。大丈夫よ、SPだっているし」 「SPはただの護衛ですからね、あなたの礼儀までは守りません。とにかく、もう少し礼儀正しく振舞っていただかないと。今日は陸人さんと海人さんが到着されるまでのツナギなんですから」 「ツナギってなによ、失礼しちゃうわ。私、来たくもないのに、着替えさせられ、塗りたくられ、こんなとこに連れられてこられてるのに」 「仕方ないでしょう。白鳥副社長は、唯一残っているそらさんの婚約者候補ですし、白鳥副社長以外の婚約者候補はそらさんのご令嬢らしからぬ態度のせいで婚約者候補をご辞退されたんですよ」 「じゃあせめて、もう少しまともな人を婚約者候補にしてよ!」  私が叫ぶと、いつものことだ、というように、灰谷は、はいはい、と気のない返事をした。
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