1章:友人くらいなら

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 なんなの。と思ったところで、まだそこにいた白鳥さんが、私に飲み物を渡してくる。あら、声だけじゃなくて、多少気は付くのね? そう思って、勢いよくぐい、と飲んでみるとジュースだった。 「これ、ジュースですけど」 「3度ほどお酒で失敗されているでしょう」 「なぜ知っていらっしゃるんですか」 「陸人から聞いてます」 「ちっ……」  思わず舌打ちにすると、灰谷が、また……と眉を顰める。いいじゃない。それで婚約者候補を断ってもらえたら最高だわ。  ちなみに、兄の交友関係は広く、特に上の兄で鳳凰グループ・ホウオウ副社長でもある陸人には多くの知り合いがいる。  その中でもアメリカの大学で同期、さらには現在親族の会社を継ぐために社内で修業中の身、という同じ境遇のせいか、なぜか兄と白鳥さんの仲はいいのだ。  兄には、もう少しきちんと友だちを選択するようにぜひともお勧めしたいものだと常々思っている。 「あまり背伸びをされないほうがいいですよ」  たしなめるように白鳥さんにそう言われて、思わずにらみつけると、また灰谷に制された。  大丈夫ですよ、慣れていますから、と白鳥さんは笑う。やっぱり白鳥さんはドMらしい。 1秒でも早くこんな変な性格の白鳥さんにぴったりの相手に巡り合えることを祈らずにはいられない。
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