1章:友人くらいなら

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 それにしても、みんなしてどうも私を子ども扱いしている気がする。  私は4兄弟の末っ子だ。それも大きく影響しているだろう。  年の離れた長女のあかりは、弁護士となりすでに結婚し子どもも2人いる。あかりの旦那さまも弁護士で、二人で父の法律事務所を継ぐ予定だ。  双子の兄の陸人と海人はアメリカの大学でMBAを取得後、叔父の会社である鳳凰グループの幹部となり、会社を継ぐ準備をしている。  眉目秀麗、成績優秀、運動神経抜群で、まさにパーフェクト人間な姉と兄たちは超エリートコースを邁進した。しかし、私はと言うと、勉強も運動も、ついでに言うと身長と胸までもが、誰にも勝てない人間に育ってしまった。  一つ、他の兄弟と比べてできることがあるとすればピアノだったのだが、ピアニストになれるほどの実力はなかった。あくまでちょっとうまいだけだ。  そんな私の長所をあげるとすれば、耳だけは異常にいい。ただし、社会ではそう役にたたない。なんなら普通に生活するうえで少し邪魔なこともあるくらいだ。  そして今私は、下の兄が所長を務める研究所の事務員をしている。つまり、結局私は何物にもなれてはいない。  それでも別にいいと思っていたが、ここ最近、なぜか祖父が多くの婚約者候補を私に紹介しだした。祖父は祖父で私の行く末が心配なのだろう。 ただ、いくら着飾っても、基本的にこんな物言いをするご令嬢は嫌われるらしく、最初はたくさんいた婚約者候補も、どんどんいなくなった。しめしめと思っていたが、この白鳥時崇だけはまったく引く気配がなかった。 ―――まったくもって迷惑な話である。
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