残念御曹司の最初で最後の恋物語

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これまでの時間を埋めるように、ともに過ごした初年。 今年も桜を共に見れることに顔をほころばせた翌年。 新たな命を授かり、幸福に満ちた三年目。 仕事の忙しさから、家族と過ごせない焦燥感に駆られた四年目。 そんな僕を、彼女が大きな愛と心で包んでくれた五年目。 そしてさらに月日は流れ――― 僕たちの思いは永遠に変わらないと実感した八年目⋯⋯。 もちろん。あれから二十年以上経過したが、僕の思いは変わっていない。 「――パパ、パパ!」 「⋯⋯ん」 ゆっくり目を開くと、結と瓜二つの僕の宝物――結花(ゆいか)が、何やらぷりぷり怒っている。 どうやら座椅子に腰掛けたまま寝ていたらしい。 「もう――! 準備終わったからって寝ないでよぉ。今から出掛けるんだから」 その隣には最近生まれた孫と娘の旦那が、準備を整え、僕が起きるのを待っていたようだ。 煌々と光るシャンデリアの光。見慣れた彼女の選んだ小花柄の壁紙。 いつもの我が家だ。 どうやら昔の夢を見ていたらしい⋯⋯。 面白い夢を見たんだと、これから会う予定の彼女にも、後で教えてやろう。
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