残念御曹司の最初で最後の恋物語

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「っ⋯⋯す、すいません! 急いでて⋯⋯お怪我は!」 「いえ、大丈夫です⋯⋯」 とは聞こえたものの、スカートからすらりと伸びる白い足は大きく擦りむけ、血が出ている。 サーッと青ざめた。 「あああぁ! 本当に申し訳ない」 「いいえ、大丈夫です。私も、ボーッとしていましたし」 「ほ、保健室に――」 慌てて駆け寄り、女性の顔に視線を移した瞬間。 僕の中の時間(とき)が停止した。 なんてことだ。 これは、運命のイタズラだろうか。 「――どうしました?」 彼女が首を傾げると、ふんわりと甘い香りが鼻孔をくすぐる。 小さな顔の周りをふんわり包む栗色の髪。 真っ黒なビー玉みたいな麗しい瞳。 それを包む翼のような睫毛。 小さく華奢な身体。 日本人なのに、ビスクドールのような面立ちは、たぶん僕だけではなく、全ての人を引きつけるであろう。 しいて言えば、天使だ。 「あの⋯⋯」 「美しい⋯⋯」 「はい⋯⋯?」 「美しい⋯⋯!!」 ガバっとその腕にしがみつき、抱き締めた途端。 彼女のタレ目がちの瞳が、カッと大きく見開かれた。
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