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そして、彼のひとり息子である僕――竹本一郎が将来的に会社を引き継ぐのは自然な流れであって、これといって不都合はないのだが――。
「手続きの方なら済ませてある。父さんも昔通った大学で寮も備わっているぞ」
だが、僕への相談も一言もなしに、それも「買い物を頼む」的なニュアンスで、決まってしまうのはどうかと思う。
「――しっかり学んでこいよ」
「⋯⋯⋯⋯」
とはいえ、変わり者の父の破天荒さには僕も、隣の母も慣れている。
僕がなぜだか“残念”と言われる由縁も、きっと父の影響と、この家の莫大な資産によるものに違いない。
そんなふうにして、流れるように春からの留学が決定し、その翌月、僕は大きなトランクを屋敷の使用人に押し付けられて
―――現在に至る。
✳✳✳
そして、運命的な出会いから、二ヶ月が経過した頃。すっかり彼女の虜になった僕は、今日も彼女のいる講義堂へと足を運ぶ。
「やぁ! 結! ランチなんて一緒にどうかな?」
彼女の名前は“有坂 結”。
僕より2つ下の20歳の日本人。大学2年であり、母の再婚した10年前からこちらで生活をしているらしい――
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