残念御曹司の最初で最後の恋物語

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この、留学生生活。僕は人生の壁というものにぶち当たっていた。 ――残念な僕は、“語学を学ぶ”という目的からどんどん遠ざかっている事にも気づいてもいなかった。 ✳✳✳ 『一郎! おい、一郎、聞いておるのか?』 「ん? あぁごめん、父さん」 とある夜。定期的な父への報告の中でも、ぼんやりとしていたようだ。 『なんだか、最近おかしいぞ?何かあったのか?』 鋭い一言に、ゔっ、と口籠る。 あったにはあったが⋯⋯自分の親に恋愛相談なんてできるわけがない。 『留学してそろそろ三ヶ月になるが日本が恋しくなったか?』 「――いや」 的はずれなソレに言葉を濁しつつ、ふと考え直す。 しかし、僕と同じように変わり者の父。そんな父も、母のハートどうにかを射止めて結婚したわけだ。 参考程度に聞いても損はないはず⋯⋯ やっぱり言ってみるのもありだろうか⋯⋯? そう改めてしまう辺りが、僕の残念と言われる由縁なんだろう。 「⋯⋯友達へのプレゼントを考えててさ。女の子なんだけど、受け取って⋯⋯くれなそうで」 “受け取ってすらもらえない”ということは、あまりにも情けなくて言えなかった。イジられキャラで通ってきた僕だが、一応プライドというものもある。
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