残念御曹司の最初で最後の恋物語

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約束の日の一時間前。僕はすでに待ち合わせ場所である大学前を右往左往していた。 「――本当に、公園で散歩なんかで良かったんだろうか。やっぱり高級レストランとかのほうが――」 全くもって、落ち着かない。 けれど、それは最初のほんのわずかのうちだけで―― 「すみません、おまたせして⋯⋯」 彼女の姿を目にした途端、心配していた気持ちは一気に霧散した。 とうとう、天使がお迎えにきなすったのかと思った。 「⋯⋯どうしました?」 「あぁ、いや、本当に来てくれるとは思わなくて⋯⋯固まってしまった。嬉しくて」 それから僕たちは、大学のそばの自然公園を、会話を楽しみながらゆるやかに歩いた。 手をつなぐこともなく、ありきたりな会話を重ねるだけの。どの講義が好きだとか、苦手だとか。どの教授が人気だとか、誰がお付き合いをしているとか。 そんな、他愛もない話をするだけの散歩。 このデートは、彼女からの希望だった。 ――というよりは 『何デートなら僕とデートしてもらえるだろうか?!』
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