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ジューンブライド。
結婚式は、梅雨の晴れ間に行われた。
「笑子、ちょー綺麗」
六月の花嫁に声をかける。
「俺が手がけたからな。綺麗に決まってんだろ」
遼が誇らしげに言うので。
「私とどっちが綺麗?」
「俺はその愚問に答えないといけないのか?」
「私だって髪やってほしかったのに」
ふくれても仕方ないと思いつつ、桃香さんプロデュースのドレスを見下ろす。
服だって、選んでほしかったのに。
仕事と、笑子のスタイリストで忙しくて、ろくに構ってくれなかった。
「意外と肝っ玉が小さいわね」
「だって桃香さん」
「女の嫉妬ほど、みるに耐えないものはないわよ」
背中がざっくり開いた、黒いドレスを身にまとった桃香さんは、顔をしかめ。
「なんであいつが居んのよ?」
「いや、結婚式の話をしたら出たいって」
「断んなさいよ」
「でも、大事な作家さんなんで」
私は、大事な作家さん、桜庭先生に手を降った。
「あんた、隣人を見捨てるわけ?」
「それが、桃香さんに会いたいらしいです」
「はぁ?」
「正式に離婚されたらしいですよ。なんだか最近、丸くなったというか」
「丸くねぇ」
鼻で笑った桃香さんだが。
「ま、暇つぶしにはいいわ」
軽く手を上げて、先生の腕に手を絡める。
そして振り返ると、ウインクした。
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