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田所さんの語りは、藤崎さんとの握手に戸惑ったシーンになる。次回も田所さんが担当する可能性はかなり低い、ということを伝えるべきか迷ったせいで、すぐに握手できなかったことが分かる。 真面目なんだ、この人。と思う。 「以上です。」 突然、田所さんがそう言って、また沈黙が始まる。 「あの、勝手に握手させてすみませんでした。」 「話、聞いてたんですね。」 「9割は聞いてました。」 「あとの1割は?」 「チョロチョロ他のこと考えてました。」 「正直ですね。」 田所さんがクスリと笑う。 「田所さんは綺麗ですね。」 「よく言われます。宝の持ち腐れって。」 また、田所さんのおしゃべりが始まる。幼少期まで遡って始まったため、これは長いぞ、と私は覚悟する。
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