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テレビをぼんやりと眺めながら、そろそろかなー、と思っていると鍵を開ける音が聞こえてくる。玄関に行くと、湊さんがノソッと入ってくる。私の顔を見て 「藤崎の乱、再び。」 と、拗ねる。大阪の乱もだよ、と思いつつ、 「何もありませんよ。」 と答えると、ガッと手を握られる。 「これは、何か、だ。」 ムスッとした顔で言ってくる。私はうーん、と考える。 確かに、大阪のあの女性が湊さんにああいう握手してたら、嫌かもしれないなぁ。 湊さんを見て 「私が触られて嬉しいのは湊さんだけです。いっぱい触ってください。」 と言うと、湊さんが目を見開く。 「エロ。」 「あ、手を、って意味ですよ。」 「いっぱい触る。」 湊さんは私の手を引いて、足早にベッドに向かう。その横顔が、あの牛の絵柄そのもので笑ってしまう。
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