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病院に戻った心愛は、先生に退院してもいいということを伝えられて、診察室を出た。待合スペースには気まずそうな表情の伊織がいて、心愛のそばに寄ってきた。
「…あっと…、声が出るようになったって聞いて来たんだ。…その、この間は、お前の気持ちを考えてなかった…。…悪かった」
気まずそうに視線を逸らしながら話す伊織に心愛はまだ少し許せない気持ちもあったが、神楽という大切な親友と久しぶりに話せたこともあって、『メンバーと楽しく歌いたい』と思い、笑っていた。
「もー、いいよ。リーダーにそんな辛気臭い顔されたら、許すしかないでしょ。それに、おれも、自分のことばっか考えてたから…。心配かけて、ごめん。メンバーのことが嫌いなわけじゃないから大丈夫」
「…そうか」
二人が和解するタイミングを見計らったかのように、ほたると想真が心愛のそばに来た。
「もりりん!声、治ったんだね!」
「よかった。これでまた、四人そろって活動できるね!」
彼らは、心愛に無邪気に笑いかける。心愛も、「なんだ、お前らも来てたんだ?」と言いながらも笑顔だった。
「…いおりんも、もりりんとちゃんと仲直りできたみたいでよかったね」
少し離れて微笑んでいる伊織を、ほたるはからかう。
「面白がるなっ!」
からかわれた伊織は、顔を真っ赤にしながら視線を逸らす。そんな伊織のまわりに笑いながら三人は集まる。
そして、笑顔の心愛は、『少しずつ、この名前、好きになっていきたいな』と思っていた。
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