思い出の認識、少しの齟齬

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「ねえ、覚えてる?」 彼女は指さし言った。 「いや、あんまりだな。」 俺はそう答える事しかできなかった。 幼馴染の彼女と歩く登校。 彼女なんて言うと語弊があるかも知れない。別に付き合っているわけじゃないんだし。 まあ?毎朝一緒に登校してるし仲もいいから、付き合ってるって誤解してる奴もいるかも知れないけど?俺はそれでも構わないって言うか?まあ付き合ってるみたいなもんだし? と思ってはいるが一歩が踏み出せない今日この頃。 我ながらカッコ悪い・・・。 「えー?覚えてないの?ほら、木登りとかしたじゃん、それで二人して下りられなくなってさ。」 覚えてるよ。当然。 「そうだったか?まあそんなこともあったかもな。」 アレだろ?俺がカッコつけて登ってさ。「来いよ、大丈夫だ、俺が助けてやる」なんてイキっておいて下りるの怖くなって夜まで木の上にいた時のだろ?泣かせちゃったやつだろ?結局大声で大人に助けを求めてめっちゃ怒られたやつだよなあ。今更思い出したくねぇよ、あんなカッコ悪いの。 「私にとっては、この公園といえばあの木、みたいなところあったから、ないの少し寂しいな。席が空いちゃったみたいな感じで。」 確かにシンボルではあったけど、あれは本当に子供の頃の話だからなあ、あの木絡みで覚えてることなんて今思い出すと情けないことばっかだから・・・。 「あー、多少はあるかもな。でもほら、最近新しく生垣ができたから遊歩道はちょっと洒落た感じになったよな。」 そう言って俺が指さしたのは公園の再整備で新しく植えられた生垣。 昔は乱雑だった植物が綺麗に並んで配置されるようになったし、新しくて綺麗なベンチもいくつか新設されてこの公園も少しオシャレになったって評判だった。 やっぱオシャレで雰囲気いいほうが女の子は喜ぶもんな。 こんな道を毎日二人で歩いてたら、そりゃあただならぬ雰囲気になってもおかしくないと思うんだよ、うん。 俺は子供のままじゃ駄目なんだ。彼女、最近どんどん可愛くなるし、もっとカッコいい大人の男にならないと一緒にいられなくなる。 「変わっていくんだね。」 彼女がそう呟く。 今までみたいな関係から一歩前に進むためには。 「そうだな。変わっていかないとな。」 差し当たって幼馴染って認識から脱却して男として見てもらわないとな・・・。
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