機械音痴

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 その日、友人が学校に遅刻してきた。1、2時間目は完全に欠席、3時間目から入ってきたのだが。教師の何で遅刻したんだ、という問いには「寝坊しました」とだけ答えていたが実際はそうじゃないと思う。 「で、何で遅刻した」 「寝坊はした、これは本当だ」  イチゴオレを飲みながら淡々と答える。寝坊はしたがそれ以外にもあったということか。 「まず起きたのが八時だった。この時点で絶望的だ」 「まあ八時は家出てなきゃいけない時間だよな」 「目覚ましをかけて寝たはずなのにな、と思って目覚ましを見てみたらバラバラ殺人のように砕け散っていて」 「……」 「昨日読みかけだった小説の1ページが開かれていた。そこには『死にたい』ってセリフのところに目覚ましのネジが挟み込まれていた。あれは絶対目覚ましの遺書だ」  目覚まし時計が自発的に粉々になるわけないだろう、という空気がその場に流れた。まわりにいる連中みんなそう思ったからだろう。もちろん俺もだ。
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