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#001.何が?
レースのカーテン越しに差し込む朝日を浴びながら、私はダイニングの椅子に座って頬杖をついてテレビを見ている。
キッチンからは母が作っている朝食の良い匂いが漂って来た。
隣に座っている父はテレビのニュースに片耳を傾けながら新聞を読んでいる。
毎朝ながら、器用な御方です。
「ゴメン、お兄ちゃん起こして来てくれる?」
と、母が言う。兄と私は3つ違い。私が中2で兄は高2。
「え~、またぁ」
テレビからキッチンにいる母のほうに向きなおり、あからさまにイヤな顔を作る。
「もうご飯できるから。お願い」
淡々と言う母に、これ以上抵抗しても無駄だと思って立ち上がり兄の部屋のほうへ向かう。
起こしに行ったって、どうせ「あと5分……」とか言って起きないんだよな。
毎日毎日…… どうしてこうも寝起きが悪いのかしら。どうせ夜中までエッチなゲームでもしているのだろうけど。
「お兄ちゃん、起きて。朝だよ!」
兄の部屋に入りベッドの横に立って大声で叫ぶ。けど返事すらない。
「おにぃ!」
今度は布団の上から兄の身体を蹴り飛ばしてみる。まだ反応がない。
だんだん腹立たしくなって、一気に布団を剥ぎ取ってみた。
横向きに── 非常口のマークのような、いわゆる『走り寝』スタイルの兄の身体が露わになる。そこでようやく兄が動いた。
「う~ん…… むにゃむにゃ……」
「おにぃ、朝ご飯できるよ。遅刻するよ!」
どうせまた「あと5分……」とか言うんでしょ。
「う~ん…… あと半分……」
え?…… 何が?
(了)
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