#005.衛のプラネタリウム

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 ところが……  この穴を開けて行く作業にてこずっている。担当は私。  星図早見盤を見ながら、星座を構成する明るい星だけを選んで球体に記して行くのだけど……  平面の早見盤を球体に写すものだから、どうも塩梅が良くない。文化祭本番に間に合うかどうか、ちょっと不安になって来た。  私の悪い予感が的中。  文化祭の前日。机や椅子を端に寄せて、教室の中央に竹材で組んだドームを組み立てて、スクリーンを張る。  録音した解説を再生する道具も揃った。あとは投影機だけなのだけど……  ようやく星の数と位置を決めて、あとはキリで穴を開けるだけ。  と、言うところまでは来たものの。これは気が遠くなるような作業。  クラスのみんなは、大丈夫?千秋。って心配してくれるけど。こればっかりは複数の人ではできないし。  私は放課後の教室で独り、球体に穴を開ける作業を続けているのです。  気が付けば、あたりが薄暗くなって来ている。私、何をしているんだろう……  まとまりがないと軽蔑していたクラスメイト達は、楽しそうにして自分達の担当の作業を終わらせた。  自分から提案することが苦手なだけで、いざとなったら、みんな団結できるんだな。  それに比べて、私はどうだろう。たった1人で地味な作業を続けている……
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