はじめに

2/4
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「彩姉さんお帰りなさい。」 と声をかけてくれるのは我が妹、りんごちゃんである。真っ赤なショートボブに愛くるしいアホ毛が一本。胸は中学生とは思えないほど大きい。といっても私よりちょっと大きいくらいだけどね。ほんと、ちょっとだけだから!私より年齢が一つしか違わないというのに、家の家事をほとんど一人でやってくれている。私はこの妹に頭が上がらないのだ。 「ただいまー。」 リビングの方へ向かうと何やらいい匂いがしてくる。 「りんごちゃん何作ってるの?」 「クッキーですよー」 そういうと、小さなクッキーを私の口に近づけてきた。ぱくっと口の中に入れると、程よい甘さが口全体に広がってくる。うん、りんごちゃんの作るお菓子は相変わらず最高だね! 「それでは私は夕飯のお買い物に行ってきます。彩姉さんお留守番よろしくお願いしますね。」 「あ、うん。気を付けてね。」 りんごちゃんは水色のエコバックと財布をもって玄関へ向かう。最近はエコバックじゃなくても、何かしらの袋を常備しておかないといろいろ大変だからね。ちょっと前はコンビニといったらレジ袋みたいな感じだったけど、最近は袋を持っていないと何かと入りずらいし。 「彩姉さんは何が食べたいですか?」 なんでもいい……はあまりよくないよね。実際に料理を作る身になると、何でもいいという答えが一番大変なんだよね。まあ、私料理したことないけど。 「そ、そうだね。えっと……サバの味噌煮、かな?」 「はい!わかりました。サバが安かったらそれにしますね!」 それだと結局今日安売りしている食材が夕食になりませんかねぇ。まあ、かわいい妹のためですから、私はいくらでも考えますよ? 「それでは、行ってきまーす。」 そういうと元気に玄関の戸を開けて、買い物へ出かけて行った。さてと、私も作業に取り掛かりましょうかね。  まあ、作業といってもそんな大それたものではない。ちょっと八代見高校の部活動について調べるだけだ。なぜかというと、もうそろそろ部活動勧誘が始まるからだ。一年生を対象に、各部活の二三年生がチラシを配ったり、部活動体験をさせたりと、いろいろしてくれるらしい。私は部活動に入る気はないけれど、一応ね。何かいい部活があるかもしれないし。  自室に戻りノートパソコンを起動する。一番上のお兄さんと長女の春姉さんからのお年玉をためて去年購入した。別にゲームをするわけでもないので、五万円くらいで買えるようなスペックのパソコンだけど。でもハードディスクはSSDじゃないとね!  私の通っている高校は八代見高校といって、ここら一帯では一番入るのが難しい高校として有名である。遠いところから受験しに来るという人もいるくらいだ。そんな高校に上位で入学した私ってやっぱり天才?……じゃないですね。兄たちも私より良い成績で入学していましたね。ちなみにりんごちゃんもこの高校を受験するつもりらしい。今年から、進学校には珍しい推薦入試を導入するらしくて、それに向けていろいろやっているらしい。きっとりんごちゃんのことだからいつの間にか『あ、合格しましたよ。』とか言ってきそうで怖い。  ノートパソコンの検索欄に、『八代見高校 部活紹介』と入力してエンターを押す。ターンという音はなかなか好きだけど、仕事できない人ほどこの音が大きいのはなんでなんだろう。 結構たくさんの部活があるんだなと感心しつつ読み進めていくと、興味を惹かれるものもちらほら見かけた。特に、茶道部。人数が一人ということもあり、人間関係が確立されていないことは確かだ。まあ見学にくらいはいってみてもいいかな。 「彩姉、風呂空いたよ。」 祐世の声が聞こえた。中学一年生の弟である。この時間になると、お風呂に入って、自室に戻って、勉強して、就寝する。というのが一連の流れとなるけど……まだドラマの続きみたいよぉ。数分渋ってたらりんごちゃんの方から『彩姉さん?』と声が聞こえたので、一目散にお風呂へむかった。  歯磨きをして部屋に戻った時には時計は九時を回っていた。一時間ほど勉強をしてから布団にもぐる。学校生活を有意義に過ごすには勉強が欠かせないので、コツコツやっていくことが大事である。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!