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下ル、アメリカンスピリッツ
ねえ、覚えている?
あの頃の私は、ちっともいい子なんかじゃ無かった。
14歳、セーラー服に身を包んだ私には、クラスの男子たちが隠れて煙草を吸っていたことが、やけに大人に見えた。
その光景は凄くショッキングで、身体に悪くて嫌な匂いのするモノだと分かりながらも憧れた。
「吸う?」
憧れてしまった。
犯罪だと分かっていても、手を出すのはあまりにも簡単で。
頷けば私は、もう彼らの仲間だった。
声を掛けてきたのがいいなと思っていた益若くんだったこと、幼い私にとって悪は魅力的だったこと。
相乗効果があったのだ、恐らく。
「釜田。」
何とも思っていない声で私を呼んだ益若くんの真似をして、駐輪場の奥、使われていない用具庫の裏で煙草を吸う。
それが私のトクベツだった。
ますます彼を好きになったのはごく自然な流れで、益若くんもきっと私のことを、と思ったのも仕方のないことで。
だから驚いた。
益若くんが、真面目なクラス委員長とキスをしているのを見たときは。
瞬く間に広まる噂、
まるで少女漫画を読んでいるよう。
私は気付いた。
煙草を未成年が吸うのは犯罪で、
何も美味しいものではないということに。
下ル、アメリカンスピリッツ / 傘下
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