迷う漢字

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〈十分と充分〉 ○十分=「物事が満ち足りて、何の不足もないさま」 ※数量的に満たされているときは「十分」になり、精神的な充足感が伴う場合は「充分」が当てはまります。 「じゅうぶん」の漢字は本来は「十分」のほうであって、「充分」はあて字です。文科省は「十」のほうを教育漢字として扱っており、教科書や公文書などでは「十分」と書くのが一般的とされています。  しかし、日本国憲法第37条では「充分」が使われています。  第三十七条 ② 刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会をに与へられ、又、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する。 03c4c69b-10c6-4fd4-9f7c-0fa6a600988d  ただ、紛らわしいときがあります。 「休憩時間は三十分だから、時間は十分ある」  違う言葉に置き換える必要があります。 〈はじめ〉 ○始め・初め → はじめ ○他・外 → ほか ○却って・反って → かえって ○薦める(推薦)・進める(進行)・勧める(オススメ料理) ○「辛い」「つらい・からい」両方の読みを持つため、読み手に迷いをあたえます。 ○分ける・分かる→紛らわしいです。開きましょう。 ○分かれる・別れる→分かれるとは、ひとつのものが二つ以上になる、「分離」「分裂」「分岐」「分散」など。 「別れる」の説明は不要ですね。  的確に使い分けましょう。〈始め・初め〉と〈分ける〉と〈別れる〉以外は開いた方がいいでしょう。 〈かたい〉 ○固い、硬い、堅い → かたい  漢字の使い分けは「固い」が広く用いられます。「硬い」は物の性質、「堅い」は状態・ようすに用いられることが多い。  対義語を考えるとおおむね答えは出ます。ひらがなでもOKです。 ○固い⇔「緩い」ゆるい ○硬い⇔「軟らかい」やわらかい ○堅い⇔「脆い」もろい ●たとえば「麺」は「かたい・やわらかい」ですから「硬い」 ○固い握手・固い団結・固い決意・固く信じる ○硬い石・硬い殻を割る・表情が硬い・体が硬い・緊張で硬くなる。 ○堅い木材・堅い守り・口が堅い。  ただし、絶対ではないものもあります。 ●「固い絆」が使われがちですが「堅い絆」も間違いとは言い難いです。そこが世界で一番むつかしい言語の所以(ゆえん)なのでしょうね。 〈あたたかい〉 ●暖かい⇔寒い ●温かい⇔冷たい 「温かい」と「暖かい」の違いと使い分けを理解するには、「寒暖」を思い浮かべるといいです。 「寒暖」に属する場合は「暖かい」を使い、「ぬくもり」や「心の和やかさ」などを表す時は「温かい」を使います。 ○「暖かい」は温度、「温かい」は気持ちです。 ○「暖かい」は「服」「気候」「部屋」などに使います。 「温度」が大きく関係しているのが「暖かい」の特徴です。「温度」の「温」ではないところがおもしろいところです。 ○「温かい」は「雰囲気」「気持ち」「心」「家庭」「食べ物」などに使います。 ●暖かい=気候や気温といった体全体で感じるあたたかさ。 ○気温が暖かい。暖かい季節。暖かい色。 ●温かい=体の一部が直接触れることで感じるあたたかさ。 ○温かいお茶。布団が温かい。温かい心。  両者の違いは曖昧なのでちょっと判断に迷うのですが、そういう時は対義語を考えてみてください。「冷たい人だ」とは言いますが「寒い人だ」とは言いません。そのため漢字で書くと「温かい人だ」と判断できます。    *** (*ΦㅅΦ*) *** 〈出来事・色々〉 「出来る」→「できる」 「出来事」は基本的に漢字表記なのですが「できごと」と書いても何の違和感もありません。  公文書ではありませんので、現代小説の場合はためらわずに開きましょう。 「色々」→「いろいろ」これは、現在では「色・カラー」を表しているわけではないので、絶対と考えて間違いないです。  もともとは文字どおり、さまざまな色・各種の色を表しましたが、室町時代後半になると、現代語のような「さまざま」へと意味の主流が変化して、ついに江戸時代には、「いろんな」という連体詞まで派生してきました。 〈ひとりひとり〉 「一人一人」→「一人ひとり」 「文部科学省用字用語例」では「一人一人」です。 「ひとりひとり」もありますが、選択は、各人の好みやその場の状況によって変わってくるはずです。 ●小説などでは、漢字・ひらがなのが「一人ひとり」選ばれることが多いようです。 「当て字」にはたどり着けませんでしたヾ(;´▽`A“  ─To Be Continued─
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