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「ミステリーの書き方」②
「●」は『ミステリーの書き方』からの抜き書き。
「※」は僕の書き込みです。
段落はWeb上の読みやすさを考慮して、適宜入れています。
─花村萬月─
【推敲のしかた】
●推敲とは、自分の書きあげた文章を格好よいものにするということに尽きるのです。決して破綻したストーリーを訂正する作業のことではありません。
●『その食堂の広さは広い』──これは、あるベストセラー小説家の作品の導入部にあった文章です。
推敲とは、まず、こういう不細工な部分を削る作業なのです。このように『馬から落馬した』式の文章を私も書いてしまうことがあります。それを独り、赤面しながら修正していくのが推敲であり、これを丹念に続けていくと、こういう陳腐な誤りを犯さなくなっていくものです。
●もうひとつ問題提起をしておきましょう。あきらかな疑問文に、貴方はなぜ『?』をつけるのですか。これは無意味な植民地根性ではないのですか。翻訳調のよくない影響でしょうか。
●杓子定規に配された主語も鬱陶しい。推敲の段階で削らなければなりません。
いいですか。日本語とは主語を省けるという素晴らしい機能を包含している言語なのです。ですから植民地根性を発揮して英文調の日本語を書く愚だけは避けていただきたい。
※僕は翻訳本を読まないのでわからないのだけど、翻訳調は『?』を多用しすぎる、と花村先生は怒っているように聞こえます。『?』に関しては前章に書きました。明らかに疑問文とわかるものに『?』は不要だと思います。
※一人称の小説の場合、主語(僕・私・オレ)は省略するつもりで書いたほうがいいです。
「僕は」「私は」が文頭にくる主語は省いてもほとんど問題ありません。ご自分の書いたものを読み返すと、なるほど、と合点がいくでしょう。
ただ、「○○に振り向いた僕は、○○した」と途中にくる場合は、複数の事柄をつなげているので、むりに省略する必要はないと思います。
●推敲とは、削る作業です。シェイプアップというのですか。デブな文章は格好悪いでしょう。スリムにしてあげる作業が推敲です。もちろん匙加減として微妙に筋肉を盛りあげることも必要であり、否定は致しませんが。
※文字数が少ないほうが、文章は伝わりやすくなります。書かなくてもわかることは書かないのが鉄則です。ただ、なにかを意図したり、情感を持たせたいなど場合は、この限りではありません。それこそが小説だからです。
【比喩】
●センスとは生まれもった才能のことです。センスのよい者には永遠に勝てないという残酷な現実がある一方で、推敲を重ねることによってある程度のセンスを獲得できるというのも事実であります。
初心者のあなたは、まずは『深い湖のように美しい瞳』といった無残な比喩を削ってみましょう。ほとんどの比喩は不要であるという文章表現上の現実があるのです。
─花村萬月─
○1989年 デビュー作の『ゴッド・ブレイス物語』で第2回小説すばる新人賞
○1998年 『皆月』で、第19回吉川英治文学新人賞
○1998年 『ゲルマニウムの夜』で第119回芥川龍之介賞受賞
○2017年 『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞受賞
※比喩に関しての記述があったので、次回はより詳しく答えている「小池真理子」さんを取り上げる予定です。
─To Be Continued─
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