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「あの日の思い出」
「ねぇ、覚えてる?」
親友で、幼馴染の奈々が俺に話しかけてきた。
「?いつの話だ?」
俺は、なんのことか分からずそう答えた。すると、彼女は少し、暗い顔をしながらこう言った。
「あの日のことだよ。」
これで俺は完全に思い出した。これは今から3年だったか2年だったか前の話。俺らがまだ学生だった頃。俺らが所属していたゼミの教授の財布を盗んだ。もちろんバレて警察に突き出された。だが、俺の記憶が正しければ、先生も何かあったのか特に何もなく終わった。こうして俺が脳内で思い出している間に彼女は何故かメイクをし、おしゃれまでしてどこかいくようなオーラを醸し出していた。そこで俺は、
「?どっかいくのか?」
と聞いた。すると彼女は食い気味に
「あの先生まだいるか見に行こ!」
と言った。もちろん俺はいく気はなかったがいろいろあって行くことにした。大学につきすぐにその教授を見つけた。最初は向こうも
「…?」
となっていたが、俺たちの立ち方や話し方を見て何か察したのか、教授は新幹線のような速さで自分の研究室に俺たち2人を通した。俺は、何を話ぜばいいのかわからなかった。教授も突然俺らが訪ねて驚いたのか長い沈黙が続いた。その沈黙を裂くように教授が話し出した。
「2人は付き合っているのか?」
【そんなわけない。言っておくが俺の片思いだ。】
なんてことは言えず、そんなオーラだけを醸し出した。すると突然立ち上がり、奈々が
「あの時どうして私たちを庇ったんですか?」
と聞いた。俺が、
(教授の質問を無視するのかよ!てか、何を聞いているんだ)
と、思う間も無く教授が答えた。
「あー、あの時、私の娘も親父狩りをしてしまっていて…あー、違う。あの時、私は、万引きをしてたんだ…。…もちろん未遂だがな!ただ、やっぱりバレたくない気持ちが勝ってしまって………。」
ものすごいカミングアウトだ!ただ、これで俺の中にあったモヤっとしたものが解決した。そして帰り際、
「もう、あんなことするなよ!」
教授が言った。なぜか晴れそうだった空に雲がかかったような気分になった。それから1週間後。俺は強盗の罪で捕まった。もちろん強盗はしてはいけない。ただ、何故か罪が殺人に置き換わっていた。そして、裁判が開かれた。そこには、教授の姿があった。1ヶ月後、俺の死刑が決まった。
「ねぇ、覚えてる?」
誰もいない、暗い部屋から聞き覚えのある声が聞こえた。
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