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エピソード2
二週間後、全校集会にあの天使が舞い降りた。
彼が舞台に現れた途端、全校にざわめきが広がり、次第に大きくなっていった。一方で、私は何も言葉を発することが出来ずに、ただ棒立ちしていた。無数の生徒たちで埋まった体育館の片隅でじっと釘付けになっていることしか出来ずにいた。
サキが、私の袖を引いた。
「ね、あの人」
「ああ、うん。こないだの」
私は落ち着いているふりをしながらも、目線は外さない。
「転校生じゃなくて、教員とはね~。すっごい童顔」
「橋本先生の甥っ子で、助手だって」
「まじ!?全然はしもっちゃんと似てない…」
「ね」
「はしもっちゃんの代理で入るって言ってたから、美術部大変なことになりそうだね~、唯一の部員さん」
「う…」
その夏、橋本先生は交通事故に遭い、全治3ヶ月のけがを負ったらしい。安静期間は助手の西村先生が特別非常勤講師として代理をしてくださるという。確かに、今まで寄り付きもしなかったミーハーな女子達で溢れかえるに違いない。私は、今までの平穏な部活動を思い返して、溜息を吐いた。
高ぶる胸の鼓動を隠すように。
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