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【 雨と 雨の日に】
雨の音がする。
時任有紀はダイニングテーブルに顔を伏せて
うたた寝をしていた。
電話が、鳴る。
そう、このタイミングだ。
ピロロロ、ピロロロ・・・・。
「はい、もしもし。時任ですが」
「こちら菅原署の林田ですが、時任理沙さんのお母さんでいらっしゃいますか?実は理沙さんと思われる方が・・・でして、ご本人か確認して頂きたいのですが・・・・」
理沙!!
ガバッと有紀は起き上がった。
電話を見る。
部屋は静かだ。電話は鳴っていない。
「また、か・・・・」
有紀は、鉛のような鈍い重苦しさを背負ったような感覚で、引きずるようにキッチンまでやっと歩いた。
蛇口をひねってコップに水を注ぐ。
溢れ出してこぼれているが、意に介さない。
もう、何年も同じ夢を見る。
雨が降ると必ず。
有紀は渇ききった喉に濁流のようにコップの水を流し込んでいく。
ごくん、ごくん、ごくん・・・・。
水を飲みながら、キッチン横の鏡に映る自分を見て、有紀は笑って呟いた。
「誰よ?あんた」
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