前途多難

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俺の視線に気付いたカジがいつもの様に軽く微笑んだかと思うと、俺の頬を優しく撫でた。 「な、何?」 「や、マージで顔色悪いなと思って。大丈夫?」 「…あんな騒がれて大丈夫なわけないし」 カジの手から軽く逃げながらため息をつく。 あーーー、今日も昨日みたいに騒がれるんかな。勘弁して欲しい。 そのままカジに愚痴を吐きながら、思い足取りで学校に向かった。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 「雨宮、おはよう」 教室に入った途端駆け付けてきたのは噂の瀬川だ。思い切り嫌な顔をしてしまおうかとも思ったがぐっと堪える。 瀬川が俺に話しかけただけでクラスメイト達は浮き足立ち、大スクープと言わんばかりにこちらを見ている。 …………気まず。 瀬川はこの視線をなんとも思わないのか? 「…はよ」 小さな声で挨拶をして、カジの腕を引っ張って瀬川から離れた。こんな風にしたら瀬川が傷つくかもしれない、とは思ったけどこんな目に合ってるのもこの瀬川のせいなわけだし、何より気を持たせたくない。 「待って!」 瀬川が俺の腕をぐい、と引っ張る。その途端女子がキャーキャー騒ぎ出すもんだから、俺らをドラマの俳優かなんかのラブシーンだとでも思ってんのか、とツッコミを入れたくなった。 「今日の昼一緒に食べない?」 「やだ」 瞬発的に否定の言葉を入れると、それを聞いた瀬川はしょんぼりと肩を落とすも、一向に俺の腕を掴む手は離れようとしない。 「なーに、雨宮ちゃん俺たちとは食べたくないって言うの〜?」 ゲッ。 鶴田の相方の横峯蓮(よこみれん)……。 バチバチの金の短髪に、目も悪くないくせに四角の黒縁メガネをかけているそいつと目を合わせないように俯く。 「そういうわけじゃ…ないけど…」 やっぱ一軍こえーよ!!!!! コイツらなんなの!? 同じ歳のはずなのになんでこんなに圧力があるわけ!? 「そういうわけじゃなかったら、一緒に飯くらい食ってくれてもいーじゃんね?」 ヘラヘラと確認を取ってくる横峯に今すぐ腹を下してしまえと呪いをかけながらも、力なく頷いた。
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