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「え、」
小さく息を飲み、どういう意味だ、と必死に考えていると、カジはにんまりとからかう様な視線を俺に向けた。
「あはは!!ドキッとした?んなこと心配しなくても大丈夫だって!俺のさっきみたいな素晴らしいスマイルで彼女なんて作ろうと思えばちょちょいのちょいだからさ〜」
「な、か、からかったな!?」
同性から告白されたばかりだから、もしかしてカジも俺の事……なんて1ミリでも考えた自分が恥ずかしくて顔が赤くなるのが分かる。
カジのいうことなんて真に受けるんじゃなかった……!!!!
俺はぶすくれながらバシバシとカジの背中にチョップを入れた。まだ笑っているカジをシカトして前に向き直る。
「なんかすげー廊下でも噂なってんだけど、俺らが購買行ってる間に面白いことでもあった感じ?」
「遥ちゃ〜ん、ご愁傷さま〜」
気の抜けた声がして俺はムッとそいつらを睨んだ。
いつも一緒にいるメンバーの、楠木尊と結城奏だ。
尊は黒髪短髪の大柄な男子で、バスケ部に所属しているスポーツ男子。奏はふわふわした茶髪に目のでかい、ハムスターみたいな背の低いカワイイ系男子だ。
「…遥ちゃんて呼ぶな。奏ちゃんて呼ぶぞ」
「は?マジキモいんだけど」
奏は可愛い顔とは裏腹にズバズバものを言ってくる毒舌な奴で、そのギャップが面白いが今はからかわれてる気分じゃない。
ていうか、瀬川も同じ男好きになるなら奏みたいな可愛いやつを好きになればよかったのに。
むすくれる俺の横で楽しそうに事情を尊と遥に説明するカジ。一時すると事情を飲み込んだ尊と遥が面白そうにニヤニヤと俺を覗き込んだ。
「大変だねぇ、お姫様は」
「誰がお姫様だ!」
「えーだってお姫様みたいじゃん〜?綺麗な黒髪にまつ毛バサバサ、綺麗な二重、顔面整いすぎっていうか?ムカつくくらいだもん」
奏がからかってくるが張り合う気力もない。
「でもまさか瀬川がな。瀬川と遥が仲良くしてるとこなんて見たことねーけど」
まだグループの中では常識人な尊がそう言ってくれて、俺は尊を縋るように見つめつつ「そうなんだよ!」と勢いよく同意した。
「まじで意味わからん、なんで俺?って感じしかない。絶対からかってるだろあいつ」
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