闇の剣士 剣弥兵衛 京へ(二)

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 この洞穴を出たのは昨日の昼頃であり、たった一晩で念願を叶えたことになる。この地を荒らす野盗に一家を皆殺しにされた弥兵衛は、この洞穴で老人に伝えると彼岸から来たと言う不動と名乗る侍に会わされた。ここは現世と此岸が交錯する場所であり、不動を師とし人の道の話と剣の修行に五年を要したが、現世では五日が過ぎただけであった。剣の修行の仕上げには、雷神、風神と名付けた秘技を教わり、闇星の剣(あんせいのけん)を授けられた。十八歳となり心技体の整った弥兵衛は、野盗の取締に手心を加えていた代官を懲らしめ、一家の仇敵となる山木伝兵衛と野盗集団を打ち果たした。そこで念願成就を不動へ告げるため、再びこの洞穴に戻って来たのである。
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