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お母さんと靴の思い出
いつの日か、お母さんが履かせてくれた初めての靴は、柔らかな温かさに包まれていた。
初めて自分で靴を履けたときにお母さんが見せてくれた笑顔。
褒めてくれた言葉を、今でもはっきりと覚えている。
キラキラ光る太陽のようなお母さんの笑顔と、ひまわり柄の靴は今でも私の宝物。
お母さんのお手伝いとして初めてのおつかいが出来たとき、大人の階段を少し上れた気がした。
そのおつかいが成功したのは、お母さんの励ましの言葉と、私を信じてくれていた想い。
そして、お母さんと一緒に選んだピンク色のスニーカーが一緒だったから。独りじゃないと思えたから。
時が立ち、私は毎日自分で靴を履き、色々な場所を巡るようになった。
友達と遊ぶ機会が多くなるにつれ、お母さんと過ごす時間も減って行ってしまったけれど、お母さんとお出かけする休日が大好きだった。
ある日の学校帰り。
泥んこに汚れた上履きを隠す私を、お母さんは優しく抱きしめてくれた。
大丈夫やで。優しく微笑んだお母さんは、私の上履きを丁寧に丁寧に洗ってくれた。
――靴は磨けば綺麗になるんよ。あんたの心も今は曇ってるかも知れんけど、磨き続ければいつかは輝くから。心配せんでええんよ。今が全てやないから。胸をはりなさい。靴はあんたの相棒やさかいね。
これから色々な世界を歩いて、色々な縁を作っていきーな。人生も世界も鉄の箱の中だけやないからな。お母さんはいつでも、どんなときでも、陽子ちゃんの味方やから。
不思議な洗剤とお母さんの手によって綺麗に変化した上履きと、お母さんの言葉は私のお守りとなった。
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