ニッチモサッチモ

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 仕事が終わり、自宅のある駅を降りて線路沿いを歩いていた。雨が降ったり止んだりの1日で、今は降っておらず、お気に入りの赤い傘をコツコツと、アスファルトに打ち付けながら、歩いていた。  線路沿い歩道には金網のフェンスがずっと続いていた。雨があがっているからだろうか、ところどころに透明のビニール傘がかかっていた。  歩道の上で男の子がしゃがんでいた。近づいてみると、例のビニール傘を抱えてへたり込んでいる。私は心配になり、立ち止まって声をかけた。 「あの、大丈夫ですか?」 「…うーん…うーん…」  男の子は私に気づく様子もなく、しゃがみこんで傘を熱心にみている。 「あの、すいません。大丈夫ですか」  私はもう一度、さっきよりも大きな声で話しかけた。 「…これ…うーん…違う…」 「すいませ…」  私は、男の子の肩に手を置いた。ブルーのシャツがビショビショに濡れていた。 「ドワッ!」  男の子は飛び上がって、傘を抱えながら数メートル横に転がっていった。ガシャン!男の子は金網のフェンスにしこたま背中をぶつけた。  フーッ…フーッ…フーッ…男の子が息を乱してこっちを睨みつけていた。 「いや、ごめん。大丈夫?」  なんで私が謝らなきゃならない。なんか違う気がする。  男の子が立ち上がり、片手で背中をさする。結構身長が高い。180以上はあるだろう。 「だ…だ…大丈夫・です…」  それだけ?もっと他に説明とかないの?  男の子は天パなのだろうか、クシャクシャの髪の毛がくるくると巻いていていた。
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