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「まったくもって汚らわしい、親から貰った身体を男をたらし込む為に使うなんて。 大して優秀でもない、本当に」 「ちょっと待った! …… いや待って下さいよ」 言っちゃいけなそうな言葉を言いそうだったので止めた、まぁ聞き慣れてるかもしれないけどこういうのを聴き慣れるってのは辛い。 「なんです?」 「さっきから聞いてれば親不孝とか優秀じゃないとかってなんで自分の子供なのにここまで侮辱するんですか?」 「私の子だからです」 「は?」 「私は常に成績も良くて運動神経も良かった、なのにこの子ときたら運動は人並み、成績だって高校に入った途端沢山勉強をしてもようやく上位止まり。 私の夫も同じように成績はよく非の打ち所がありませんでした、けれどこの子は見た目だけはそこそこ良くて中身は欠落品です、このままだとこの子はダメになる、わかりませんか?」 な、なんだこいつは? そんなの人それぞれだろ。 いくら親が両方頭が良くたってそれを引き継ぐなんて限らないのに。 「俺は頭も大して良くなくて容姿もそんなに良くない、運動神経も人並みです」 「そうですか、それは可哀想に」 「だからって俺はそんなの気にしてません」 「それは大層可哀想ですね」 「あんたにとっては優秀じゃなきゃ全部欠落品ってことか?」 「そうは言ってません、あなたに関してのただの感想です。 ですがまぁ…… 落ち着くとこに落ち着いたってことですか。 姫乃にはお似合いだわ」 「おばさんッ!!」 その時角谷が横から大きな声を出したので俺は驚いた。 「ビックリするじゃない竜太君」 「おばさんいつも姫乃に厳し過ぎるんだよ」 「それは優秀な竜太君と比べれば見劣りするのは当然だわ」 え? 角谷って優秀だったのか?? 「姫乃そうなの?」 コソッと姫乃に話し掛ける。 「うん、竜太は学年で1番頭良いし運動神経も抜群なの」 「そうです、なのにうちの姫乃ときたら」 「おばさんには黙ってたけど俺は姫乃のことが好きだったんだ!」 「ええッ!? そうなの竜太君」 姫乃の母さんは今まで表情を崩さなかったが初めて崩れた。 「そうだよ、おばさんから姫乃をよろしくって言われた時俺嬉しかったんだ、姫乃ともっと一緒にって口実も出来て。 なのにおばさんがそんなだから姫乃は…… おばさんを必要以上に意識するからいつもより姫乃と接してるのに逆に心は離れていって」 「だ、だったらまた頼むわ竜太君」 「そんなこと無理なんだよおばさん、姫乃はそこのやつを好きになっちまってるんだから」 角谷は俺を指差した。 何だこの流れ…… 「なら姫乃、これからはそこの人と離れて竜太君から勉強とか色々教えられなさい、それだったら私も」 「お母さんッ!」 「何よ?」 「お母さんはいつもそう、優秀な人には媚びて良い母親らしい内面を見せて。 あたしと2人きりの時は冷たくして、お母さんだってあたしにとやかく言う権利ない!」 角谷と姫乃から責められて明らかに姫乃の母さんの表情がどんどんグラつく。 「私は母親よ! 口出す権利なんてそれだけで充分よ!」 「お母さんだってしてる!」 「はあ?」 「今付き合ってる人に色目使ったり誘惑するようなこと言ったりお母さんあたしに言ったこと自分でしてるじゃん!」 「ちょ、ちょっと! 竜太君や一条さんもあるのになんてことを」 「お母さんこそいい加減にしてよッ! あたしに優しくしてよ! あたしだってまだ子供だもん、甘えたりワガママ言ったり欲しいもの買ってもらったりだってしてもらいたい!! だから頑張ってた、けどお母さんはちっともあたしを見てくれなかった」 ◇◇◇ 「良かったのか?」 「うん、あゆ君と竜太が居たお陰で今まで言えなかったこと言えた」 「おばさん相当きてたなぁ」 「多分あゆ君が居なかったらあたしあそこまで言えなかった。 あの家に居られなくなってもあゆ君が居るって思えたからあたし言えたんだ。 でも……」 「いいぞ、俺のとこに厄介になるって言っても。 姫乃の好きにすればいいんだから」 「だったら俺の家でもいいのによ」 角谷は少しムッとしながら言った。 「ありがと竜太、でもやっぱりあたしあゆ君が好きだから」 「ちッ、そうらしいな…… おいあんた」 角谷が俺の肩を掴む。 「もう2度と姫乃を泣かせるようなことするなよ? わかったか?」 「わかってる」 「ならいい。 けど姫乃、そいつが嫌になったら」 「ならないと思うけどわかった」 そう言うと竜太は「じゃあコンビニ行ってくる」と言って行ってしまった。 「じゃあ俺達は帰るか」 「うん!」 姫乃の母さんと話しをしたはいいが別に何か解決したわけじゃない。 けれど姫乃は親に言いたいことを言えたみたいで少し明るくなっていた。 
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