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「ふあああ…… 7月のこの暑さはヤバいですね」 「だな、エアコンもぶっ壊れて死にそうだ」 「窓を開けてもちっとも涼しくならないですし虫が入って来るだけだし。 あ、また蚊に刺された」 姫乃はもう下着が見えるのお構いなしで服でバサバサと扇いでいる。 「ダメだ汗ぐっしょり。 ベタベタで気持ち悪いし下着だけになった方がマシかも」 「は!? お前俺がこうして服着てるのにそれはないだろう!」 「じゃあ一条さんも脱げばいいんですよー」 「俺が居るのに脱ぐとかバカかお前は!」 「一条さんからしてみればあたしお子ちゃまなので別に脱いだところで何も問題があるとは思えないんですけどー?」 こいつ…… 揚げ足ばっか取りやがって。 と思っていると本当に姫乃は上着を脱ごうとしていた。 最初はエッチ!とかセクハラ!とか言ってたくせに。 「お、おい!」 「ああ、違いますよ」 「違うって脱ごうとしてんじゃん」 「この服汗で気持ち悪いから着替えるだけです」 「だったらあっちの部屋で着替えろよ!」 「えー」と不満な顔をした姫乃を隣の部屋に行かせた。 3日前から調子が悪かったエアコン、そして今日の朝ついに壊れた。 直してもらえるように頼んだけど今日は来ないし。 つーかさっきの絶対わざとだろあいつ。 それにしても確かに暑いし今日は家に居ないでどこか涼しい場所に避難したい。 「ダメだぁ一条さん、着替えても暑い。 下着も濡れてるから結局取り替えたし。 ここに居たら蒸されて死んじゃうよぉ〜」 「だな、どっか行くか?」 「え? うん! 行く」 「急に元気になったな」 どこかへ行くと聞いて姫乃は先程のグッタリした様子からシャキッと外行きに着替え始めた。 俺はいつものレンタカー店に行ってレンタカーを借りて来る。 やっぱ本格的に中古車でも買おうかな…… あんま人目につきたくないしな。 「お待たせしました!」 「じゃあ行くか」 「ゴーゴー!」 そうしてエアコンが効いた車内で俺と姫乃はしばらくドライブをした。 「涼しい〜、もうずっと車の中でいいかなぁ」 「ガソリン、それとレンタカー代」 「それ見ず知らずの子に言ったら嫌われますよぉ〜」 「お前だから言ってるんだけど?」 「えへへ、あたしはそんなんで嫌いになりませんしね、言える立場じゃないし」 「…… なあ姫乃はさ、これからどうするつもりなんだ?」 「え?」 俺が姫乃にそう訊くと姫乃はこっちを見てしばらく何も言わなくなった。  多分俺の家から出た時のことを考えてるのかな? だってそうだろ、こうしてずっと俺の家でなんて暮らせるわけがない。  姫乃の親が所謂ネグレクトだって言っても俺じゃ出来ることに限界があるんだし。  「どうしよう…… わかんない。 あたしはもう家には帰りたくないし」 これからのことを訊くとしゅんとしてさっきまでの上機嫌だった姫乃は下を向いた。 「ううッ、酔ってきた」 「下向いてるからだって。 あ……」 コンビニが見えたのでコンビニに入りジュースを買って姫乃に渡した。 「冷た〜い、ありがとうございます」 「少し上向いてろよ」 「はい」 姫乃はシートを少し倒してペットボトルを額に当てて溜め息を吐いた。  「大丈夫か?」 「今回は心配してくれるんだ」 「え?」 「あんまりはっきり大丈夫かなんて言ってくれないし。 でも一条さん優しいから心の中ではそう思ってくれてるんだろうなぁって」 「何言ってんだよ」 「ごめん余計な気遣わせて。 考えたくないこと言われてちょっと困っただけ、でもあたしだってわかってるよ」 少しすると姫乃は両腕をピンと伸ばした。 「おでこ冷やしてたらちょっとスッキリしました」 「そっか…… それよりお前脚閉じろよ、パンツ見えそうだぞ」 姫乃がシートを倒して横になった時スカートもズレたので少し気になってたけど。 つーかその短いスカートなんなんだよ、露出多めだよなこいつ。 「あ、ホントだ。 別に減るもんじゃないからいいですけど」 「女がそれ言うか?」 「いやいや一条さんこそパンツ見えそうなシチュエーションで敢えて相手にそれ言いますか? 襲えるチャンスなのに」  「襲えるって…… それより他の誰かに見られるかもしれないだろ?」 「あ、や…… そ、それはそうだよね」 姫乃は急に顔を赤くして脚を閉じた。 なんだよ、減るもんじゃないとか言ってたくせに。 そんなに恥ずかしがるなら最初から脚閉じてろよ。 こいつたまに挑発してくるくせに恥ずかしがるツボがよくわからん。 姫乃の具合も良くなったみたいでいろんな店に寄ったりその途中で食べたいところがあったみたいなのでそこで食事中でのこと…… 「わぁ、あのカップル誰も見てないと思ってチューしましたよ!」 立ち寄ったとあるカフェの中、姫乃がコソコソと俺に話す、俺の斜め後ろの席のカップルらしい。 「俺からは見えないし。 それよりもお前もチラチラ見るのやめろよ」 「さすが拗らせた一条さんは言うことが違いますねぇ」 「そんなんじゃなくて誰も見てないと思ってるなら見えても見ないでやれよまったく」 「…… 一条さん、あたしって高校2年生です」 え? 俺こいつの話今聞いてるのとまったく違う話題が出たぞ。 「そうだな、そんなの言われるまでもなくわかってるけど」 「じゃああたしが一条さんのことどう思ってるのかもわかってますか?」 「どうって……」 「あたしもう結婚出来る歳です、だったら子供じゃありません!」 「ええ!? ちょッ! お前こんなとこで何言ってるんだ?」 「こんなとこじゃないです、雰囲気はあります」 い、いや、雰囲気は…… あるのか? カップルはチラホラ居るけど、ていうかそれって。 「あ、いやまぁ極端な言い方で結婚とかはあれですけど」 「うん……」 「……… あたし真剣に一条さんとお付き合いしたい」 涼しいはずのカフェの中なのに俺の背中にジワリと汗が滲んだ。
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