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「今日はありがとうございました」 「は、はあ……」 白城がペコッと頭を下げる、最初こそ白城は驚いたがすぐに取材になり何事もなかったように問答を終えた。 俺はかなり拍子抜けしてしまった、ちょっとでも高校の頃の話でもするのかと思っていたら何もなしだったし。 白城はあの頃より髪も長くなり何より色気が増したような気がする。 化粧もバッチリで姫乃もこういうメイクをしたらこんな風になるのかな? なんて思ったりもした。 まぁ白城にとって俺ってこんなもんだよな、つまんない奴だと思われてるだろうし。 だが白城は客間から出ようとした時ピタリと止まった。 「一条君」 「ん?」 「連絡先教えてくれる?」 「あ、そう…… えッ!?」 「ぷッ、ぷぷぷッ」 白城が小さく笑って俺の肩に手をポンと乗せた。 「相変わらずの反応だね一条君」 「はあ? え?」 「なんか変わってなくて安心するねぇ君は。 というか懐かしいかな?」 「揶揄ってるのか?」 「ううん、連絡先教えてってのは本当だよ。 特別にどんな記事にするのか一条君に最初に見せてあげたいしさ」 「別に俺は……」 俺が白城の言うことに戸惑っていると俺の胸ポケットに入っていたスマホを白城はパッと取る。 「あ、おい!」 「いいじゃん、減るもんでもないしそれに久し振りに一条君に会ったらちょっと話もしてみたいなぁなんて思ったし」 「俺に話?」 白城が俺に話なんてあるのか? お互い一方的だったけど白城は俺に対してもう飽きたと言わんばかりだったくせに。 「ほい終わり」 登録が終わったみたいで白城は俺の胸ポケットに携帯を戻した。 「一条君ここら辺に住んでるの?」 「まぁ…… うん」 「そっか、あたしはほんのちょっと離れてるけど車だし問題ないね?」 「いや、俺車持ってないんだ」 「えー、そうなの?」 白城がマジかよこいつみたいな顔をする。  失望したか? でも白城からしてみたらもう俺なんて地に落ちたような評価だろうし別にいいか。 「それじゃあたしが迎えに行ってあげるからさ、その時予定空けといてね?」 「え、白城が迎えに来るの? なんで??」 「だから話してみたいなぁって言ったじゃん。 じゃあ今日はとりあえずこれで失礼するね、仕事頑張ってね」 そう言うと白城は客間から出て行った、俺は白城が出て行くと携帯を確認する。  「白城……」 LINEに白城の名前があった、俺はなんで断らなかったのかと自問自答する。  白城の誘いなんて受ける必要もない、あいつが携帯を取った時だって無理矢理取り上げることだって出来たはずだ。 なのに俺は登録し終えるまで何もしないで待っていた。 あの白城から話したいなんて言われたからか? 俺はまだ白城のことを?? モヤモヤした気分で家の玄関を開けると姫乃が迎えてくれた。 「おかえりあゆ君! 今日はねぇ〜、お魚料理してみようかと思ったんだけど失敗しちゃった、ごめんね。 でも勿体無いから2人で頑張って食べよー!」 「ただいま」 姫乃があれこれ言っているがあまり俺の耳には入って来なかった。 「あ、あれ…… ?! ご、ごめん! 開き直ってみたけどダメだった?」 「何が?」 「あ、ええとお料理失敗したの」 「ふぅん、そっか。 そんな時もあるよ」 「へ? うん…… あゆ君怒ってる?」 「怒ってないけど?」 怒ってはないけど何故か気分がピリピリする。 白城と同じような顔の姫乃が俺の傍にいるせいか?  って姫乃は何も関係ないじゃないか、落ち着け俺。 「あゆ君……」 俺の様子を心配しながら伺う姫乃の頭を撫でると姫乃はその手を掴んで頬っぺたに持っていく。 「ごめん姫乃、ちょっと仕事が忙しかったからさ」 「そうだったんだ、お疲れ様あゆ君。 なんかごめん」 「姫乃が謝ることないって」 「あ…… ううん、あゆ君疲れてるのに今日は美味しくないお魚料理になっちゃったから」 「いいよ、姫乃の料理だしあんまり期待してないし」 「むぅーッ! 頑張ったあたしに対して失礼!!」 俺は何故か嘘をついていた。  けど白城に会ったと言えば良かったのか? 言ったってどうなるってんだよ? 大丈夫、俺はもう大人だし白城のことだってこいつを関わらせることなく何事もなく終わらせられる。 「はい、あゆ君召し上がれ」 「甘い…… いや、なんかしょっぱい? なんだこの味付け?」 「だから失敗しちゃったの。 でも次は多分上手く作れると思うなぁ」 「これで?」 そうして夕飯を食べ終わり姫乃が風呂に入っていると俺の携帯が鳴る。 まさかもう白城から? と思って画面を開くとただの広告メールでそれにイラッとした。
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