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最近姫乃は自分に用意された部屋で寝なくなっていた。
まぁもともと狭いアパートで姫乃が来てから着替えやらなんやらあるからウッドカーテンで仕切った部屋であって部屋じゃないが。
「ぐふッ! お、おい! いきなりダイブしてくるのはやめろ」
「だってあゆ君もう寝ちゃったのかなぁって寂しいし」
「俺は明日も会社あるんだ、だからもう寝る」
「あたしも明日学校あるんだ、だからもう寝る」
そう言って姫乃は俺の布団を捲ってまたもピッタリと俺の身体に密着してきた。
これ何の拷問?
「これ何の拷問?」
「へ?」
俺の心の中を読んだみたいに姫乃が言った。
「いやそれはお前が俺にしてるんだろうが」
「ここまでしてるのに何もされない、恋人なのに何もされない、されたらされたで複雑だけど」
「複雑なのかよ?」
「嘘だよんッ、出会った初日だったらヤバいかもこの人だけど今は嬉しい!」
「お前は出会った初日から居候させてくれるならそれもやぶさかじゃないみたいに言ってたろ」
「まぁ状況が状況だったし」
とかなんとか自分を律しながら姫乃と話をしているうちになんやかんやで1時間経ってしまった。
日付はもう変わってしまっている。 流石に寝ようと思って体勢を変える。
「ああ、離れちゃった」
「手は握ってるだろ」
「うん」
会話が止まりシーンとして時計の秒針だけが響く中……
「あたしってやっぱ子供っぽい?」
「まぁそう見える時もあるな」
「だよね」
「…… 別に姫乃とそういうことするのもう多分抵抗とかないと思う、姫乃が好きだし」
「えッ?」
いや俺何口走ってるんだ? もう寝ろよ。
「俺って初恋からいろいろ拗らせちゃって姫乃が高校生だからって…… なんていうかいろいろ理由付けてたけど」
「いろいろ理由付けてても拗らせててもあたしあゆ君のことが好きだよ、別にこうしてくっ付いてるだけでもホントは凄く幸せ」
「そっか」
姫乃に振り返ると姫乃はニコッと笑って俺の頭を撫でた。
「後ろから抱き付くのもいいけどこうしてあゆ君の顔が見える方が好き」
フワッと俺の唇に姫乃はキスをした。
「あゆ君好き」
「ああ、俺も」
そうして瞼を閉じた。
◇◇◇
「朝だぁ…………」
「朝だな…………」
「眠い」
「眠いな」
やってしまった…… 寝ようと思ったら姫乃がまたキスをしてきて姫乃が変な声を出してくるからもう煩悩を殺して寝ようと瞼を閉じたらもうどっちがどっちとかよくわかんなくなってそのままの雰囲気で周りが明るくなる頃まで…………
俺は猿か!? 姫乃と同い年の男子じゃあるまいし経験が遅かった分の反動か?
「にひひ、とうとうしちゃいましたねぇ」
「ご、ごめん……」
「何が?」
「いや姫乃初めてだったらもしかして痛かったのかなって」
「え?」
………… ?! まさか姫乃は初めてじゃない?
「お、お前もしかして経験あり?」
「ううん、初めてだよ。 痛かったけどあゆ君のしたいように好きにしてもらおうって思って」
「我慢してた?」
「それより嬉しかったよ、だってこんなに朝方までだもん、あたしのことそんなに好きだったんだね!」
そう言われると恥ずかしくなってきた。 すると姫乃が意地悪な表情をする。
「いやぁー、あれだけ引っ張ってたあゆ君がまさか小鳥が囀る時間まで求めてくるなんて」
「うるさい、一時の気の迷い…… なんかじゃないな、俺は姫乃が好きだ」
そう言うと意地悪な顔になっていた姫乃の顔がカァーッと赤くなった。
「あたしもそうだし…… あゆ君大好き」
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