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俺は電子社会に嫌気が指した。
店で買い物をするにしてもレストランで食事をするにしても端末が無いと支払い出来やしねぇ。
一昔前までは現金が使えたが、キャッシュレス促進法とやらで今は紙切れ同然で、文化財として博物館にも置かれている始末だ。
急に現金が使えずに混乱すると思いきや人間誰しも順応しやがる。俺なんて未だに機械の使い方なんてからっきしなのによ。なんて暮らしにくい世の中になっちまったんだ。
それに最近の人間ったら何だい、歩きながら端末、電車で端末、会社で端末、帰ってきて端末。
暮らしに人間性ってのを感じねぇ。
こうなったらあの世にでもとんヅラして悠々自適に農業でもやったらあ。
男は画一的に並ぶビルの屋上に立つと躊躇なく飛び降りた。
目が覚めると川の傍に転んでいた。
起き上がると赤い顔をした人間と呼ぶには大き過ぎる巨体が目の前に立っていた。
絵本に良く出てくる鬼というものに違いない。
「俺は死ねたのか、そうかそうか、ならばこの川は三途の川という事だな。嬉しや、これで煩わしい電子世界とはお別れだ!」
すると鬼は「三途の川の渡船料のお支払いはあちらの電子決済機械で...」
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