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大人なのに走る、を読んで
https://estar.jp/novels/25993986
大佐戸達也さんの代表作、『大人なのに走る』を読みました。病院勤めの事務職員たち、しかもかなり大勢の人々が出てくる群像劇です。
病院の事務、つまり医療事務のお仕事のストーリーでした。
かなり硬派で冷徹な筆致で書かれていて、専門・業界用語や業界の常識、医師たちとの関わりと認識のズレ、同僚や先輩後輩とのやり取り、うまくいくこともあればうまくいかないこともある……そんな人間模様を厳密に描き切っていました。物凄いプロットの厳密さを感じさせます。
ここまで専門的に突っ込んだ作品は珍しいのでなないかと思います。大佐戸さんはファンも多い模様で、たくさんのコメントが残されています。難しい作品でも、しっかり読者がついているところが凄いなと思いました。
個人的には私の亡き父が、最期は老健施設で過ごしたこと、父の最期には残念ながら間に合わなかったこと、介護や医療の現場での、多くの人たちの支え、たくさんの感謝を思い出しました。
そして、やっぱり……最期を自宅で迎えることができなかった父に、申し訳ない気持ちがよみがえってきました。
そんなことも思い起こさせる多くの短編が、23編に分かれて収録されています。ぜひとも皆さまにおすすめしたいと思い、弱小エッセイですが、取り上げさせていただきました。
大佐戸さんの多くの作品が、たくさんの人に、さらに今よりもたくさんの人に読まれることを、心から願っています。
『大人なのに走る』って、粋なタイトルです。私はタイトルつけるのがすごーく苦手なので、尊敬してしまいます。
病院といえばテレビの医療ドラマを思い出す人が多いのでしょうが、こちらはもっと地味で堅実なドラマです。医師たちを影で支える人々の奮闘記です。華やかな医療ドラマは、医師だけのものではない。彼らを支える職員あっての病院です。
どうか多くの人々の目に入り、読まれますように。私は大佐戸さんの文章文体がとても好きです。上品だし、教養を感じさせます。特に品のよさは群を抜いていると信じます。
ただの読み捨ての娯楽作品とは一線を画したユニークな作品。どうか多くの人の目にとまりますように。
『大人なのに走る』
https://estar.jp/novels/25993986
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