24人が本棚に入れています
本棚に追加
希釈
https://estar.jp/novels/26007720
大佐戸達也さんの作品、再び。
『希釈のメソッド』という掌編を読みました。
二回も大佐戸さんの作品を取り上げると、まさかストーカーしてるんじゃあるまいな、と疑われそうなのですが、別にそういうわけではありません。
心を打たれた作品については、やはり文字として残しておきたい。感銘を受けました。
数ページの短い作品なので、すぐに読めます。
ぜひ、読んでください。
と言っても、私フォロワーとても少ないので、このエッセイも何人が読むのかわかりませんが……
作品の内容には触れませんが(ネタバレしちゃう)、自分の問題と切っても切り離せない事柄を思い出したのです。
私は若い頃、いたって普通の社会人で、毎日休まず仕事へ行っていました。少し前の時代だったので、まだネットや携帯はありませんでしたが。
ただし、ひとつだけ他者と違う部分がありました。
それは、影で長期間にわたって、陰湿なハラスメントに遭っていたことです。
相談できる人もいなくて、たった一人で抱え込み、限界まで働き続けました。
その結果、精神の病に陥り、今に至るまで健康ではないのです。ヘルプマークをつけて歩いています。
病の過程で、薬をたくさん飲んで救急車に担ぎ込まれ、胃袋を洗われる体験もしました。意識を失ってから、18時間くらい眠っていた気がします。
その間の視界は真っ黒でした。そのまま目が覚めなければ、この世からいなくなっていたのです。
幸いにも回復は早く、5日で退院しました(この手の人は回復は早いと何かで読みました)。
薬を飲んだ原因は、もちろん過去のハラスメントにあります。ハラスメントは私の中の「毒物」でした。胃袋の中の大量の薬と同じです。毒です。
胃洗浄は毒物のすべてを取り除くことはできないのでしょう。心の中の毒も、私の中から消滅したわけではありません。
けれども、限りなくゼロに近づくことができています。あれほど強大だった毒を、何十年も経過した今、私はある程度飼い慣らすことができるようになりました。
最初は必死で濃すぎるものを少しずつ薄めるだけだったものが、ようやく実を結んで、本当に透明に近く薄まってきたのかもしれない。
この物語を読んで、そんな風に感じました。
心を打つ物語って、「これは私のために書かれている」と感じられる作品なんじゃないかと思うのです。『希釈のメソッド』は、まさにそういう作品でした。
誰の心にも、何かしらの毒が潜んでいます。「傷」と言ってもいい。その厄介なものを、どうやって飼い慣らすか。人生の課題です。その毒が回り回って自分をさらに傷つける場合もある。一方で、その毒があるために、他者に優しくできる場合もあります。
私はどうだろう、私の場合は。
ぼーっと考え込んでしまう、作品でした。
おすすめします。
ぜひ、お読みになってください。
『希釈のメソッド』
https://estar.jp/novels/26007720
***
最初のコメントを投稿しよう!