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友だちがエッセイ集を出した
先日、私の友だちが書籍デビューしました。
小説ではなく、エッセイ集です。『いつかみんなでごはんを 解離性同一性障害者の日常』というタイトル。
帯は作家の村山由佳さんです。この帯がまた秀逸で、読み終わった後で「まさにこの通りだ」と感じました。
著者である友だちのペンネームは「碧月はる」さん。お付き合いはネットから始まって5年くらいの女性です。もちろんリアルでお会いしたこともあります。
彼女は幼い頃から、両親によって苛烈な虐待を体験させられた人です。あまりにもその虐待がむごいものだったので、解離性同一性障害を患うこととなりました。
その障害の詳しい内容については、私の言葉で説明するのは適切ではありません。私はただの友だちであり、碧月はるさん本人でもお医者様でもないのです。私が不適切な説明をうっかりとしてしまうよりも、この本が誰かに届いてくれたら、と願います。
困難の多い解離性同一性障害を抱えながらの日々の生活を、ときに苦しそうに、ときに軽やかに、ときに熱っぽく語りかけてくれます。「私の、私たちの日常は、こういうものなんです」と。彼女の、彼女たちの日常はつらくて、どうしようと悩むことも多く、どうしてこんなに自分ばかりと嫌になる日々もあり、それでもなんとかここまで生き抜いてきた。彼女の紡ぐ言葉はすべて美しく、気高く、愛すべきものとなります。
何かのひどい被害に遭った人々のことを、「サバイバー」と呼んだりしますね。彼女はそのサバイバーの一人。そして私もある被害のサバイバーの一人です。被害の種類は異なりますが、誰かから理不尽な苦しみを長期間強いられた者です。
私にとってはるさんの一言ひとことは重く、そして励ましになるものでした。苦しんでいる人が、私以外にもいる。そして生き抜いている人が、私以外にもいる。私も彼女と一緒に生き抜こう。理不尽な苦しみに、NOと言おう。私の人生は、この私のものだから。
私の苦しみは私だけのもので、誰かと比べられるものではありません。あの人の苦しみに比べたらあなたの苦しみなんて大したことない、などと乱暴なことは決して言ってはならないのです。私の苦しみも、はるさんの苦しみも、それ単体で「苦しい」のです。苦しみは絶対評価であり、比較してはいけない。
『いつかみんなでごはんを』を読んでいると、私の苦しみも少し軽くなる気持ちがしました。苦しむことを許してもらえる、そんな風に感じます。不思議な読後感でした。
いつか「みんな」でごはんを食べられたらいいのに。この「みんな」の意味はとても重いのです。どうかこの文章を読んだどなたかに、届きますように。どなたかが興味を持って、この本へたどり着いてくださいますように。
いま私はとても、碧月はるさんと、ごはんを食べたい。
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