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一吉視点
日中はゾンビが少ないといっても、あれだけ数がいれば警戒していても遭遇してしまう。 その都度一吉がゾンビを焼き殺してはいるため、能力の使用から疲労が蓄積し休憩せざるを得なくなってしまった。
「じゃあ俺は食糧調達へ行ってくる」
「あぁ。 僕たちはここで待っているから」
信晴は二人に比べ役に立てないということで、率先して雑用をこなしてくれている。 自分より遥かに年下な彼の頑張っている姿を見ると少しばかり胸が痛む。 ただ適材適所であるのは仕方がない。
今は無意味に気を遣っている場合ではないのだ。
「ねぇ、三成くん」
「・・・うん?」
信晴が小さな商店に入っていったのを見て三成に尋ねかける。 二人きりの時に聞きたかったのだ。
「本当はさっき、何か夢を見ていたんじゃないのかい?」
そう言うと分かりやすく三成は視線をそらした。
「話しにくい夢の内容だったのかな?」
問いかけに三成は小さく頷く。
「・・・うん。 でも、一吉お兄ちゃんには伝えたいと思ってた」
「話してくれるの?」
三成は頷いて夢の内容を簡潔に述べる。
「兄ちゃんが、ゾンビになる夢を見た」
「ッ・・・!? え、それってつまり、信晴くんがゾンビに喰われるということか・・・?」
確認するように尋ねると三成は何故かぶんぶんと首を横に振った。
「食べられたところは見ていない。 だけど、確かにあのゾンビは兄ちゃんだったんだ」
「そうか・・・。 分かった、教えてくれてありがとう。 できるだけ信晴くんをゾンビに近付けないように意識しよう」
「あの・・・」
「他にもまだあるのかい?」
言いにくそうに三成は言った。
「も、もしナースステーションでゾンビに襲われそうになったら、炎を打つのはちょっと待ってほしい」
「ん? もしかして、それが信晴くん?」
「うん」
「でも、それは・・・」
相手がゾンビなら戦うしかない。 こちらが手を出さないとゾンビに喰われる未来は目に見えていた。 一吉自身友人や仲間を何人も手にかけた。
ゾンビになった彼らに襲われればそうするしかなかったのだ。
「あ、あのね! 夢で見た時は、兄ちゃんがゾンビになっても襲ったりはしてこなかったと思うんだ」
「え、ゾンビになっても・・・?」
「うん。 それに僕の名前も言っていた。 もしかしたら、意識が残っていたのかもしれない」
その訴えかけを完全に鵜呑みにするのは少しばかり気が引ける。 予知が有効に活用されるところを今のところ一吉は見ていないのだ。
「・・・そうか。 分かった」
だが三成の言うことは尊重したいと思っていた。 ゾンビが信晴だから三成はそう言っているのかもしれないが、様子を見るくらいはしていいのかもしれない。
―――でもゾンビに意識があるだなんて聞いたことがない。
―――仮に意識があったとしても、それはゾンビになりかけだからだろう。
―――いつ意識が途切れて、ゾンビ化するのかは分からない。
三成の話からして信晴のゾンビは一吉の炎で撃退したのだと思った。
―――炎を放たなかった場合、どうなるのかも分からない。
―――だけど・・・。
もしゾンビになった信晴を殺せば、三成の協力を今後得られなくなる可能性があった。 いくら炎が使えるようになっても連発はできないため、一人ではどうすることもできないのだ。
―――元々成功率の低い賭けなんだ。
―――三成くんの言葉を信じてみても、いいのかもしれない。
予知のおかげでいつ襲われるかやシチュエーションまでも分かっているのだ。 対処はいくらでもできる。 一吉は一縷の望みをかけ信じてみることにした。
―――いや、そもそも信晴くんがゾンビにならないようにすればいいだけだ。
この後は信晴が戻ってきて食事を摂り病院を再び目指した。 休憩が十分だとは言えないが、ある程度なら炎を放つこともできそうだ。
どのみち集団を相手にすることはできないため、日が明るいうちになるべく進んでおきたかった。
―――この力がいつまで使えるのか保証もないしな。
そうして数時間を歩き、病院へと辿り着く。 病院は山にあるため日中帯でも薄暗く、ゾンビがいそうな気配が漂っている。 時刻は午後一時。
一番いい時間ではあるが、モタモタしていて夕方にでもなればかなりマズい状況になる。
―――タイムリミットは5時間くらいか。
―――時間との勝負だな。
そうして三人は病院の中へと侵入した。
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